「あれだけのことをしたにもかかわらず、何の反省もしていない犯人が、長くても、たった14年3か月(編注・拘留期間を除く)で塀の外に出てくると思うと怖いです。たった14年後には、犯人が塀の外を歩いている。そう思うと、今から不安と恐怖しかありません」
街の人の声を聞いた。
30代の女性は「被害者は夢を追うこともできず、元の生活に戻ることすらできない。軽すぎる量刑に、同じ女として不快感を覚えますね」と被告への憤りを隠さず、20代の女性は「いろんな後遺症を背負って、毎日悪夢にうなされて、ほとんど生き地獄ですよね」と冨田さんが直面する苦悩を思いやった。
ストーカー加害者や被害者のカウンセリングを行うNPO法人ヒューマニティ理事長の小早川明子さんも、判決に、
「短いと思います。ストーカー犯罪の特徴である再現性が捨てきれませんから」
と疑問を投げかけ、加害者の再犯防止のためには、制度導入が必要と訴える。
「8年ほどで出所し私のところに来た加害者が、“相手を殺そうと思っている”と話したこともあります。刑務所ではストーカー犯罪に対する治療が行われていませんので、制度として作っていくことが必要です。
犯人は、自分の思いどおりにならないので、冨田さんに制裁を加えたわけです。その考えが根底にある限りは、反省はできないでしょうね」
28歳の岩崎被告が、刑期満了で出所するのは42〜43歳。
「10年以上離れれば、彼女への欲求は沈殿するかもしれませんが、あくまでも沈んでいるだけです。出所すれば、外部の刺激にかき混ぜられ再現する可能性があるのです」と小早川さんは不安視する。
20年近くにわたり、元恋人によるストーカー被害に遭っている男性(49)がいる。
おびただしい電話と罵詈雑言にわいせつ語を書き連ねたハガキに危険を感じた男性と妻(49)は、警察に相談。最終的に殺人事件などを扱う捜査1課が対応し、逮捕に至ったという。
だが今も誕生日やクリスマス、バレンタインデーなどに、恨みのこもった手紙が届く。
「警察で指紋を取ったんですが、何もついていなかったようです。これが一生続くのかと思うと、本当に不安ですよね。相手の存在が消えない限り、恐怖は続きますよね」
と逮捕後も夫婦で怯える。
「ストーキングは反応を欲しがる禁断症状」
岩崎被告が収監されれば、冨田さんが岩崎被告に接近されることはないが、判決を不服とした岩崎被告は3日までに、東京高裁に控訴した。