2人の間の接点は──
犯罪心理学に詳しい、新潟青陵大学の碓井真史教授は、
「悲鳴をあげればいい、逃げればいいと話す人は多いですが、犯罪被害者に話を聞くと、まるで蛇に睨(にら)まれたカエルのように何もできないという人は非常に多いんです。
意外かもしれませんが、悲鳴をあげたことがない人が、突然悲鳴をあげることなんてできないんですよ。彼女はきっと、怖くていうことを聞くしかなかったのでは」
と状況を分析する。
それもそのはず、警察の発表によれば、死亡推定時刻は午後7時ごろ。母親に迎えを頼む連絡をしたわずか30分後なのだ。未沙さんは、自分が何に巻き込まれているのかわからず、身を硬くするしかできなかったのかもしれない。
未沙さんの殺害場所は、事件への関与が疑われる長野県の大学に通う男子学生(21)の持ち物から浮上した。
未沙さんの死亡推定時刻の約40分後。午後7時40分ごろ、石川県穴水町の自動車専用道路で、歩行中の男子学生が軽自動車にはねられ重体になった。近くには、彼の車が止められていた。
助手席には血のついた包丁。車の名義から男子学生が滞在していた空き家を捜索したところ、遺体が発見された。空き家の鍵は、車の鍵と同じ鍵束につけられていたという。
空き家から男子学生がはねられた現場までは約20キロ。車で30分ほどはかかる。
この男子学生の犯行とすれば、18時30分過ぎに未沙さんを拉致し、バス停から約6キロの距離にある空き家に連れ込み、19時ごろに殺害。その直後には家を出発し事故現場に向かったと推測される。
あまりにもあわただしい犯行。今のところ、2人の間の接点は見つかっていない。「無差別犯行の可能性」との報道も。
男子学生が搬送先の病院で翌11日午前11時30分に死亡したため、真相は藪の中だが、男子学生の心の支えになっていた祖父の存在が彼に希望を与え、その死が男子学生を自暴自棄にさせた形跡が浮かび上がった。