立ち姿が美しく、セリフが完璧な佐藤浩市
主役は、佐藤以外になかったという。
「ドラマには立ったり歩いたりするシーンが全体の約5%ありますが、佐藤さんはまず、立ち姿が美しい。そして、セリフが完璧です。全国の販売店員1500人を前に演説する長いシーンがあり、30回くらい撮影しても、ほとんど間違えなかったですね。佐一郎だけでなく、演説を聞いている出演者、エキストラの様子も撮るので回数が多くなるんです。佐一郎自身の撮影以外は、台本を読みながら、または佐一郎のセリフの音声を流すだけでもいいんです。ですが、俳優としての矜持でしょう、すべてを演技してくださいました。おかげで現場の士気は非常に上がりました」
撮影は上海と日本全国におよび、2か月あまり行われた。四方にカメラを置き、いろいろな角度から撮影するという方法を採用しているため、出演者は360度、気が抜けない。
「福澤監督は、“セリフをなるべく早く”とお願いしていました。それは、技術的な説明ゼリフも多いので、たくさん表現したいからこそ。僭越ながら山崎努さんに“セリフの言い回しはスピードがあるのに説得力もあって見事ですね”と感じたままをお伝えしたら、ご本人はニヤリとされていました」
心地よいスピード感のあるセリフは全編に行き渡っていて、後半に登場する内野と大泉のガチンコ対決も迫力満点の仕上がりに。
「日本を代表する俳優さんたちの、熱く、むさくるしい(笑)お芝居を堪能してください。前作では額に汗して頑張っている姿が気持ちいいとのご意見をいただきましたが、今作でも男たちは激しくぶつかり合っています」
物語後半に、全国のディーラーが一堂に会するシーンがある。この撮影には1500人のエキストラが参加したという。すごいのは、人数だけでない。
「エキストラの大半はボランティアの一般市民の方ですが、演出チームは彼らにも芝居を要求するんです。笑いを交えながら“あなた方が参加してくれたら、この作品はもっとよくなるから、厳しくしますよ”と説明。素人さんだからできなくて当然ということはないんです。実際、何度も撮り直しをしましたが、エキストラも自分が出演者であるという気持ちで頑張ってくれました」(貴島P)