倫子に足りなかったものとは

 合わない人と、無理して一緒にいる必要はありません。けれど、倫子が相手のことを知ろうとしていないこと、意思表示をしようとしていないことが気になります。浦田が映画の話ばかりするのは、倫子は「映画が好き」と話したこと、倫子の職業が脚本家であることから「良かれ」と思っている可能性は十分あります。

 なので、「映画を見るのではなく、違うことをしたい」と言うか「こういうストーリーの映画が見たい」と逆にリクエストしない限り、倫子の“我慢”は続きます(余談ですが、倫子は脚本家なわけですから、貪欲に映画の知識を吸収して、自分の仕事の“メリット”につなげるくらいのしたたかさが欲しいものです)。

 浦田は「二人が付き合った記念」として、自分の好きな映画を倫子にプレゼントし、倫子は観たくもないのに「超楽しみ」と嘘をつきます。オトコの話を否定しないというのは、日本に伝わるモテテクですが、心にもないことを言うから“我慢”する関係を打破できないことに気付いていません。

 映画に限らず、男性と趣味が完全に一致することはほとんどないと思いますし、一緒である必要もないと私は思います。が、会話はしてほしいのです。それは相手に媚びるためではなく、みなさん自身のためです。

 シカゴ大学認知社会神経科学センターのステファニー・カシオッポ博士によると、異性に出会うと脳の角界と呼ばれる部分が活発に動いて、出会って0.5秒で相手を恋愛相手としてふさわしいか見極めているそうです。恋人候補として脳がOKを出すと、男性はさらに女性の外見の細部をチェックし、女性は男性の行動をチェックして記憶にとどめるそうです。

 ということは、男性と会話して、女性側の記憶に残るようなエピソードを男性から引き出せれば、恋愛が生まれやすくなるということですから、みなさんがトクをするのです。

 婚活女子のみなさんとメールのやりとりをしていると、婚活のコミュニケーションを「男性を喜ばせること」であると信じている人の多さに気付きます。そんな表面的なことよりも、みなさんにトライしてみてほしいのは、身近な人と会話をしてよく話を聞くこと、自分のメンタルの弱点を知ることです。

 残念ながら、男性はスーパーマンではありませんので、結婚したからといって幸せを保証してくれる存在ではありません。幸せになるために結婚するのではなく、誰と結婚しても幸せになれる。みなさんには、そんな自立した女性になってほしいと思います。

 8回にわたった連載は、今回が最終回となります。みなさんの婚活の成功をお祈りして、お別れの挨拶とさせていだたきます。ありがとうございました。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。2016年8月に男性向け恋愛本『確実にモテる世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)を上梓。