病歴も預金も丸裸、監視ツールに活用も
総務省が今年3月に出した『マイナンバーカード利活用推進ロードマップ』には、民間利用の想定がずらりと並んでいる。
「インターネットバンキングへの認証手段」「イベント会場にチケットレス入場・不正転売防止」「東京オリンピックでの入場管理」など。そこで最も目立つのが医療分野への活用だ。
神奈川県保険医協会の知念哲事務局主幹は「ロードマップでは、(1)カードと保険証の一元化、(2)医師資格との連携、(3)クレジットカードや診察券などの多様化の3点が連動した絵図が示されました。要は、政府は個人番号カードと保険証との一体化を重要視していると思います」と説明する。
実際、総務省が昨年出した「マイナンバー制度の施行状況について」によると、今年7月以降に、健康保険証としての利用を目指すことが明記されている。もしそうなれば、私たちは否が応でも個人番号カードを所持せざるをえない。その結果、何が起きるのか。
「医療機関は、健康保険番号の読み取り機を設置し、市町村や協会けんぽなどの保険者とオンラインで常時接続することになります。するとマイナンバーは患者のレセプト(診療報酬請求)やカルテ情報を収めた医事コンピューターと連携し予防接種や健康診断の時期、病気の治療歴などに接触可能となります」(知念さん)
ひとたび漏れた医療個人情報はどうなるのか。同協会の桑島政臣政策部長は、以下のコメントを協会HPに載せている(要約)。
《’15年、個人情報保護法が改定され、“病歴”を含む個人情報は“要配慮個人情報”と定義し、オプトアウト(ホームページなどで個人情報の二次利用を謳えば黙示的に同意とみなす方法。ただし、個人は利活用の拒否権をもつ)を禁じたが、厚生労働省は、カルテ情報などの新規取得“インフォームド・コンセントは不要”とし、事実上、オプトアウトで対応可能とした》
つまり、隠したい病歴をもつ個人に製薬会社や食品会社が群がるおそれがある。さらに、何かの病気になった人が、マイナンバーで過去に自治体での健康診断の未受診がわかると、「自己責任だ」として公的給付が制約される可能性もありうるのだ。
医療に加え、マイナンバーは来年から任意ではあるが、金融機関の預金口座にも適用される。政府は、これで、税務調査の厳格化や社会保障の不正受給の防止などを目指すとしている。