「小学1年生から6年生までの3018個の例文は、すべて古屋さんが作成しています。古屋さんは上智大卒の知識人であるにもかかわらず、ひたすら“子どもにとって難しいうんこ例文になっていないか?”と考えてくれました。うんこと向き合うために沖縄に飛び、ひとり、きれいな海を見つめながら例文を考えたそうです(笑)」(谷さん)
そんなかいもあって(!?)古屋さんがまさに「ひねり出した」フレーズは、高クオリティー&大爆笑ものばかりに。「これならいける!」と手ごたえをつかむも、大きな問題に直面したという。
「私たちは教材を商材として扱ったことがなくノウハウがありませんでした。悪ふざけだと思われないためには、楽しいだけではなく、きちんと学べる作品にしなければいけない。アドバイザーとして、長年、学習教材を手がけている編集プロダクションさんにご協力いただき、書き順や言葉のバリエーション、読み方を書かせてから漢字を書かせるなど、実際に学習効果のあるドリルとしての側面に注視しました」
漢字学習の最大の問題点は、繰り返し書くことが求められるため、途中で飽きてしまうこと。そこに、子どもにとってキラーフレーズである“うんこ”をミックスさせたことで、むしろ楽しい時間に変えてしまったことは、もはや発明と呼んでも過言ではないだろう。さらに、例文にはこんなこだわりも!
「生理的に受け付けない『食べる』『臭い』といった例文は作りませんでした。“新春のあいさつにうんこを持っていきました”など季節を感じるものや、大人の階段を上り始める6年生の例文では、うんこから卒業するような感傷的な例文も含まれています。古屋さんが意図的に物語性のある内容にしているので、そこも注目してほしいところです」
また、発売当日に、一般の主婦がTwitterに「こんなドリルが発売されている(笑)」と写真を投稿するや、リツイート数が4万件にまで膨れ上がった。
「SNSでの反響は想定外でした。でも、まさかここまでのヒット作になるとは……。手ごたえはあるものの、拒否反応もあるんじゃないかって。響きは『うんちドリル』のほうが優しいものの、インパクトに欠けますし、何より社長と古屋さんは『うんこ』にこだわっている。とはいえ、企画者である社長自身も、“本当に売れるのか?”と、だんだんと不安を覚えていったくらいで」
と、谷さんが振り返るように、発売にあたり実際に3つの学習塾で子どもたちに使ってもらい、子どもや親の反応をリサーチしたほど。大まじめにうんこと向き合ったからこそ、確信を得ることに成功した。