女房の弁当も泣く泣く持ち帰る日々
実際の現場で働くドライバーにも話を聞いてみた。ヤマト運輸で20年働く、中野透さん(40代=仮名)は、ここ1~2年で会社のやり方が変わってきたという。
「1年前から出勤と退社時にタイムカードを押すようになりました。やはり是正勧告や裁判続きで懲りたんでしょうね。残業をするなと言われるけど、再配達と指定時間があるから絶対無理。結局、サービス残業は当たり前なんです」
少し前までは昼食の時間も10分から15分しか取れなかったのが、30分以上取るように指導された。食べるのはコンビニ弁当だ。
「以前は女房が作ったお弁当を持って行っていたんですよ。ところが時間がなくて食べられない。捨てるわけにもいかず、持ち帰って晩ご飯と一緒に食べていました。すると、女房が悲しそうな顔で“捨ててきてもいいのに”と言う。とてもそんなことできないから、結局、弁当はやめたんです」
中野さんが1日に扱う荷物は130~150個だ。
「再配達がだいたい2割以上。僕の担当するエリアは団地も多く、5階建ての最上階まで米とか6本入りの水を運んで不在だとガックリしますね。不在が続いたときは、きっと鬼の形相になってますよ」(中野さん)
佐川のセンターから台車で荷物を届ける仕事をする男性もこう嘆く。
「僕は運んだ個数で給料が決まる出来高払いなので、不在で荷物を持ち帰る場合は不在票を書く手間がかかるだけ。個人宅の場合、10個配るのにも約1時間かかる。全部不在なら時給0円。そんなケースもありますよ。指定したのに、なんでいないんだって思いますよ」
横田氏がヤマト運輸の荷物を仕分けるベースに潜入した当時を振り返る。
「僕らは夜の10時から朝7時までの勤務でしたが、朝の6時にドライバーが荷物を取りに来た。その日の夜の11時に、同じ人が不在の荷物を返しにきたんです。どんだけ働けというんだと思いましたね」
限界まで問題を先送りにしたあげく、その場しのぎの犠牲者にされたのは現場を支えるドライバーたちだ。
5月12日、関西のヤマト運輸のセンターで、パート従業員の勤務時間を短く改ざんした「裏タイムカード」が作成され、賃金の未払いがあったとして、労働基準監督署が是正勧告を行った。
ヤマトでは昨年も2度の是正勧告を受け、ドライバーへの2年間の未払い残業代の調査を行っている。その対象は4万7000人、支払額は1人50万~200万円になるといわれている。1人50万円だったとしても235億円。年間営業利益の2分の1に達する金額だ。
しかし、前出のドライバー中野さんによれば、
「今年の2月中旬に2年間の出勤表の照合をさせられました。慣れない僕らはとても全部はできない。途中で出勤の時間が来ちゃったんで、やったところまでしか請求できないという文書にサインして終わりです」