実際にBLファンに話を聞いてみると、予想以上にディープな目線で楽しんでいる。
「よく地味なヒロインにイケメンがガンガンアプローチする設定の少女マンガがありますが、“そんな話あるわけねーだろ”って思ってしまうんですね。でも逆にかわいすぎる娘が主人公だと、それはそれで感情移入できない……。だから男同士かなと(笑)。攻め手と受け手、どちらの男の子も好きになれるのも魅力です」(20代女性)
という意見や、
「男同士の恋愛って、秘密を第三者視点で覗いている感じがゾクゾクするんですよね。不倫を見ているのと似た感覚かもしれません。カラミも美しく繊細なんです」(30代女性)
など、わかるような、わからないような……。
BL雑誌の関係者にも魅力を聞いてみると、
「BLは“こんな世界があれば”といった一種の理想というか、ファンタジーの世界なんです。なので、彼らの恋愛は“毎日手をつないで下校するのに、いっこうにキスをする展開にならない”といった、終始みずみずしくももどかしいといった描かれ方をします。2人だけの世界を丁寧に描くのが魅力です」
そしてBLには欠かせない男性同士のカラミについて、前出のマルコ氏は、
「ベッドシーンは登場人物2人の思いが頂点に達する瞬間。恥じらいや喜び、そのほかいろいろな感情が表情に表れる盛り上がりどころです。表情から登場人物の思いを想像してみるといいのでは」
続いて、“創り出す側”にもツッコんでみよう。思春期の男子高校生の甘酸っぱい恋を繊細な絵のタッチで表現した『同級生』が'16年にアニメ映画として公開され、2億円の興行収入を叩きだした漫画家の中村明日美子氏。この6月にも『ダブルミンツ』が実写映画化されたBL界の超売れっ子作家は、業界の市場拡大について、
「BLはポルノの要素も多いので以前は愛好家の間だけで楽しまれているという印象でしたが、最近は作品も読み手も多様化してきました。今回の映画も中高年の男性など、以前では考えにくい方が映画をご覧になってくださっていると聞きまして、とてもうれしく思っています」
クリエイターも最近の“盛り上がり”には驚いているようで……。また、その魅力について聞いてみると、
「私個人の意見ですが、男同士の恋愛みたいなものさえ入れてあれば、どんなものでもジャンルとして括れる懐の深さだと思います。食わず嫌いをせずにいろいろ読んでみることかと。自分では思いもよらない“萌えツボ”が見つかって人生の幅が広がることと思います」(中村氏)