「東京大改革」を掲げて、都議会の「伏魔殿」ぶりを白日に晒(さら)し、秘密体質の一掃に力を尽くす小池都政だけど、肝心の政策は「都民ファースト」と言えるのか? 小池都知事の政策を項目別に検証してみた。近い将来想定される首都直下地震への備えは──。
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政府の地震調査研究推進本部が「30年以内に70%の確率で発生」と予測する首都直下地震。国の中央防災会議の被害想定では、首都圏全体で死者は2万3000人に上る。
「30年以内に70%という数字そのものはまったくあてになりません。シミュレーションの結果でしかない。現に、これまでに起きた大地震は、いずれも国がノーマークだったところでばかり発生しています」
そう指摘するのは地震学者で、武蔵学院大学特任教授の島村英紀さんだ。
「首都圏は世界でも類を見ないほど地震の起こりやすい地域。地下には北米プレートがあり、さらに東から太平洋プレート、南からはフィリピン海プレートが入り込んでひしめき合っている状態だからです」
地震には大きく2つのタイプがあり、活断層が引き起こす『内陸直下型』、プレートのひずみから発生する『海溝型』に分かれる。首都直下は前者、東日本大震災は後者に当たるという。
「内陸直下型の場合、人が住んでいる真下で起きるため、地震の規模を表すマグニチュード(M)に対して被害が大きくなりやすい」
東京の下町は地盤が弱いうえ、古い家屋の密集地帯が多い。特に怖いのは冬の夕方。中央防災会議は、暖房器具や調理で火を使うことの多い18時に、M7・3秒速15メートルの風が吹く中で震度6の地震が起きた場合、1万1000人の死者が出ると予測する。
「1か所から火の手が上がったとき、うまく消し止められなければ、死者はそれ以上になるおそれが。関東大震災では火災で10万人もの方が亡くなりました」
では、都の防災対策はどうか?
小池都知事は「女性目線の防災対策」として、液体ミルクの備蓄や活用を掲げるほか、都心部主要道路の無電柱化(6月7日に条例成立、9月施行)を提唱。
バーチャルリアリティーを活用した災害体験車の導入も謳(うた)い、来年度予算案に1億3000万円を盛り込み、五感を使った防災訓練の普及に期待を示す。
「やらないよりやったほうがいいのは確かですが、パフォーマンス的で実際の効果はどうか? 災害は弱者を襲う。耐震補強したくても資金がない人も多い。予算はそこへ割いては?」