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私はこれまで、発達障害の専門医として、こんな質問をよく受けてきました。
「発達障害と個性はどう違うのか?」と。
私はその違いについて、拙著『発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち』(SBクリエイティブ)にまとめました。このコラムでは、発達障害の特性について触れながら、なぜ発達障害が「少数派の“種族”」といえるのか、その理由ついてお話していきましょう。
発達障害と個性はどう違う?
まずは、発達障害の特性から、説明しましょう。
以下の図は、「発達障害の基本的な特性」を表しています。
発達障害には、「自閉スペクトラム症」「注意欠如・多動症」「学習障害」など、いくつかの種類があります。そして、それぞれに特性があります。
たとえば、自閉スペクトラム症には「対人関係が苦手」で「こだわりが強い」という特性があり、注意欠如・多動症には「多動性・衝動性」と「不注意」という特性があります。
発達障害とは、これら「自閉スペクトラム症」「注意欠如・多動症」「学習障害」などを総称した呼び方なのです。
こだわりを対人関係のなかで調整できるかがカギ
発達障害は、その人が持つ「特性」、一般的な「個性」とはどう違うのか。ここではケーキ好きな女性たちを例に解説しましょう。
会社などで、休み時間に女性どうしがおしゃべりをするときに、どこのお店のケーキがおいしかったという話になることがあります。そうすると、ほかのお店のケーキと比べてどうか、使っている材料はそれぞれなにか、最近できた新しいお店はどうなのか、といった具合に、マニアックな知識が次々に披露されたりします。
このような会話をする人のなかには、「ケーキオタク」と呼べる人もいるでしょう。
では、ケーキオタクの女性たちに、「対人関係が苦手」「こだわりが強い」という自閉スペクトラム症の特徴が見られるかというと、一概にそうとはいえません。
ある種のこだわりをもっていても、それを対人関係のなかで柔軟に調整できる場合には、むしろ「対人関係が良好」だったりします。
ケーキに関する雑談でいえば、参加者のほとんどは、ケーキの知識を追究するためではなく、おしゃべりで時間をつぶしながら親交を深めるために、たまたまケーキを題材にしているのに過ぎないわけです。