世の婚活中の男女は、コロナの蔓延で、リアルにお会いするお見合いができない。また、お見合いから交際に入っていたのだけれど、思うようにデートできない日々が続いています。

 ライターをしながら、仲人としても婚活現場に関わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えてゆく連載。今回は、こんな状況下で、「すれ違ってしまう人。会えなくても相手の心をしっかりつかめる人」について考えたいと思います。

デートができないいま、できることは!?(写真はイメージです)

会いたい気持ちを抑えきれずに

 辰雄さん(36歳、仮名)は、愛美さん(34歳、仮名)にお見合いをしたときからひと目惚れでした。瞳がチワワのようにクリッとしていて、若いころの薬師丸ひろ子のような雰囲気。お見合い後に交際に入り、2月は週末、必ずデートをしました。

 ところが3月からコロナの感染者は増えていくいっぽう。4月に入ると、緊急事態宣言が発令されてしまいました。

 愛美さんは、看護師で医療従事者です。コロナが蔓延していく中、仕事が日に日に激務になっていきました。ストレスもたまりクタクタでした。以前は、辰雄さんがLINEをすれば、その日のうちに返信が来たのですが、それが翌日、翌々日と、返信する日にちがあくようになったのです。

 辰雄さんから、私に相談の連絡がはいりました。

「日曜日にLINEを入れたのですが、今週は全くレスがありません。どんな形にせよ、コミュニケーションを取っていないと、気持ちが離れてしまう気がするんです。返信が来なくても、僕からは毎日LINEを入れたほうがいいでしょうか?」

 本来なら、LINEは毎日しあったほうがいい。けれど、今は看護師さんである愛美さんにとって緊急事態。日々の仕事をすることにいっぱいいっぱいなのでしょう。私は、辰雄さんに言いました。

「今は、彼女のペースに合わせてあげたほうがいいのでは? こんな事態はおそらく看護師になって初めてのことだろうし、LINEを返信する余裕なんてないのだと思いますよ」

 ところが、辰雄さんは我慢ができず、LINEを入れてしまったのです。

『今度のお休みの日、僕が車で迎えに行くので、公園とか屋外のカフェとか、風通しのいいところで会いませんか?』

 次の日、愛美さんの相談室から、『交際終了』が来ました。

 理由は、こうでした。

「彼女は、毎日戦場に行くような気持ちで、職場に出かけているそうです。来院した患者さんには、至近距離で接しないといけない。いつ自分がコロナに感染するかわからない。そんな恐怖の中で、毎日働いているのに、“会いたい。車で迎えに行くから、ドライブに行こう”と言われても、その精神的余裕は今ないそうです。LINEが来るたびに、どんどん辛くなっていったとのことでした」

 会わなければ気持ちが離れてしまう。そう考える辰雄さんの気持ちはわかります。しかし、看護師さんである愛美さんの疲労とストレスは、計り知れない。

 会いたくても今はグッと我慢をする。自分の気持ちよりも愛美さんの状況を汲んであげる。それも愛の形ですね。

 つらくても我慢していることが“やさしさ”となって愛美さんに伝わったら、コロナが終息したときに、また二人の関係が育めたかもしれません。