行政書士・ファイナンシャルプランナーをしながら男女問題研究家としてトラブル相談を受けている露木幸彦さん。今回はコロナ禍で夫に不倫された妻の実例を紹介します。

※写真はイメージです

 2021年1月に発令された2回目の緊急事態宣言。居酒屋での飲み会、新幹線や飛行機での帰省など、移動や集合による楽しみを奪われ、孤立や自粛による怒りや哀しみに耐える日々が昨年から継続中です。特に3月21日に宣言が解除された東京、神奈川、千葉、埼玉では、先に解除された他地域の住民や、宣言中なのに自粛無視の人々に対する嫉妬心も高まっていたように思います。

 個人差こそあれストレスの許容量には限界があり、まともな精神状態で過ごすには何らかの方法で解消しなければなりません。中にはイライラのはけ口が「性欲」に向かう人もいます。もちろん、独身のカップルが楽しむぶんにはいっこうに構いません。しかし、どちらか一方が既婚だとしたら……。

夫と同僚女性の不倫が発覚

 筆者は行政書士・ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談を行っていますが、2020年の不倫相談は前年より増加していました。今回の相談者・咲良(さくら)さん(仮名・48歳)もコロナ禍で孤立中、夫に裏切られ、涙を流した1人です。

 咲良さんの地元には星がきれいに見える有名な丘があるそう。カップルがそこに車を停め、星を眺めながら、イチャイチャするのが定番のデートコース。しかし、カップルが濃厚接触をすれば、コロナウイルスに感染するリスクが高まります。そのため、1回目の緊急事態宣言中、駐車場は閉鎖されたのです。

 そして宣言が解除されると、咲良さんの夫・幹夫さん(仮名・50歳)はすぐにそのデートコースを楽しんだのですが、同伴したのはあろうことか咲良さんではなく別の女。そのままホテルへ移動した行動履歴が自家用車のカーナビに記録されていて発覚したのです。そして咲良さんの事情聴取に夫はあっさりと観念。

 夫の職業は介護施設の所長で、相手は同僚の職員・恵梨香さん(仮名・32歳)。夫は咲良さんに「本当に大事なものに気づいた。恵梨香はもう飽きたよ」と弁明したと言います。筆者はホームページでLINEのIDを公開しているのですが、咲良さんがそのLINEに「どうしたらいいですか?」と送ってきたのが相談のきっかけでした。

 咲良さんが夫と結婚してから15年、山あり谷ありの5400日超。特に大きな谷は1年前、咲良さんが患った乳がんでした。乳房の摘出手術と抗がん剤の治療で咲良さんは心身ともにボロボロに。復職をあきらめ勤務先を退職しましたが、長い闘病を乗り越えた結果、ようやく取り戻したのが平和で静かな今の生活。それを脅かされそうな状況に咲良さんは怯えていました。筆者は「不倫が常習なら離婚すべきですが、まだ初犯なので」とLINEを返し、しばらくの間、様子を見ることにしました。

 もちろん、咲良さんは相手の女性と直接話したい、謝ってほしい、慰謝料を払ってほしいという気持ちはありましたが、行動を起こさなかったのは今の生活を第一に考えたからです。そのことで夫の機嫌を損ね、万が一、離婚に発展したら困るのは病後の身体を抱えて職を失った咲良さん自身。だから、いろいろ考えた末、女性への怒りをいったん押し殺すことに。もちろん、夫の「(恵梨香とは)別れる」という言葉を信じればこその判断です。