目次
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ー “がん”と診断され、手術台で涙も
Page 2
ー 家族は「一番身近なドクター」
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ー 針を持つと胸騒ぎがスッと消える

 今から9年前のこと。右目の下に、プツッと小さく赤い点を見つけたキャシー中島さん。最初は気にすることもなく、いつか治るだろうと思っていたのに、少しずつ広がりだし、2年がたつころには、8mmくらいになっていた。

「そのうちに、ちょっとグジュグジュするようになって、それでかさぶたができるんだけど、そのかさぶたが取れると、またグジュグジュして中が乾かない感じ。これは普通ではないと嫌な感じがしたんです」と当時のことをキャシーさんは語る。

「病院に行くのが怖くてね。でも娘に『ママ、本当に悪い病気だったら早く病院に行ったほうがいい』と背中を押されて、検査を受けたんです」

“がん”と診断され、手術台で涙も

 そして下された診断結果は、基底細胞皮膚がん

 基底細胞皮膚がんとは表皮の最下層で発生する悪性腫瘍で、紫外線のダメージで発生することが多い。治療しないでおくとがんが浸潤し、転移する可能性もある。 

がんになると、悪い組織を残さないために患部を大きくえぐり取るというイメージがあったので、不安で不安で」

 担当医師からは、皮膚表面にできるがんだから、思っているほど切除はしないと説明を受けたが、手術台に横たわり、顔にガーゼがかぶせられると、不安で涙がこぼれた。でも、泣いたのはこのときだけ。

「家族に涙は見せたくなかったんです。でも手術後に、夫の勝野さんは『大丈夫だよ、このくらいの傷はママのチャーミングポイントになるよ』って。娘や息子は『目に見えるがんでよかった。手遅れにならなかったから』と言ってくれました」

 家族の温かい励ましはうれしかったのかと思えば、意外な答えが返ってきた。

「やっぱり顔を切るって想像以上にショッキングだった。手術直後は、落ち込んで、慰められても、私の気持ちは救われなかったの(笑)。でもこうして心配してくれる家族のために、私はくじけちゃいけないって思いましたね」

 ところがそれから5年がたった2021年に、今度は鼻の右側の骨の横に、前と同じ皮膚がんが見つかる。

「定期検診を受けていたので、今度は早く見つけられました。1mmと言われていたので、切って4、5針縫えばいいと思っていたのが、実際は24針。黒い糸で鼻から頬にかけて縫われてました。まるでパッチワーク?って」