かもめんたる・岩崎う大が、注目のお笑い芸人の今後を予想する連載企画。今回の芸人はヨネダ2000。
漫才を音楽に編曲したような従来にはないネタ
毎年数多くの新星が出現するお笑い界ですが、ここ数年でお笑いファンそして同業者である芸人を最も驚かせた才能は、ヨネダ2000ではないでしょうか。
シルエットは絵に描いたような凸凹コンビ、衣装は謎の青色のスウェットとTシャツ、ショートヘアで小柄な誠さんと、大柄な愛さんの、まるで少年とその母親のような2人の並び姿は一度見たら忘れられません。
彼女たちのネタはとにかく斬新で独創的です。
独創的なネタをやる芸人は数多く存在するのですが、彼女たちほど若くしてそれを成功させているコンビは非常にまれです。
多くの芸人は独創的な芸風に至るまで、紆余曲折あるものです。
もともとは、普通のネタをやっていたけれど、鳴かず飛ばずで、自分と向き合ううちに独自の道を見つけたり、若いうちから独創的なネタに挑戦しても、誰からも評価されず、それでも時間をかけて、さまざまなテクニックや表現方法を習得し開花するコンビなどです。
しかし、彼女たちは、その独創的な芸風にもかかわらず、結成2年目でM―1グランプリの準決勝まで進み、多くのお笑いファンの度肝を抜く。
さらにその翌年には決勝に進出し高い評価を得ているのですから、天才としか言いようがありません。
また、彼女たちが鮮烈な印象を残したのはネタの斬新さだけでなく、女性のコンビの多くが、これまでパーソナルな自分のキャラクターを上手にネタに反映し漫才やコントを作ってきたのに対し、彼女たちはネタに本人たちの性格的なキャラクターを反映させないスタイルだったからだと僕は分析します。
つまり、女性コンビの形としての新鮮さとネタの斬新さ、さらにコンビ結成間もないことと話題になる要素がいくつもあり、それらが掛け算され、大きなインパクトを残したわけです。
まあ、僕が先ほどから斬新だと言っているヨネダ2000のネタなのですが、言葉で説明するのも野暮なのでぜひ実際のネタをご覧になっていただきたいです。
漫才の中にリズムネタが入ってくるスタイルで、こんなに面白くなるネタを僕は初めて見ました。
漫才中の2人の会話は必要最低限で、リズムに乗せて話が展開していき、いろいろな事象が起きていくという流れです。なかなかにシュールな空気が根底には常に流れていますが、それが突き抜けてバカバカしさに到達していくので、しっかり笑えて強度の高いネタになっています。
シュールなネタというのはお客さんを選びますが、リズムネタがそこにバカバカしさとキャッチーさを足してくれることで、多くの人に受け入れられる形になっているのです。
また、逆にいうとこれがシュールな題材じゃないと、リズムネタに喰われて幼稚なダサいネタになって終わってしまいます。
すごく、絶妙なバランスで成り立っているネタで、そのレシピは2人しか知らないという孤高のネタスタイルだと思います。
印象として、2人のネタは、普通の漫才をAIがリズムネタにリミックスしたような、もしくは、漫才を音楽に編曲したような、従来の芸人にはない千里眼を使った処理を感じます。
それでいて、笑えるというのがヨネダ2000のすごさで、同業者である芸人もうなる由縁なのです。
何か新しいことをやっている2年前に彼女たちのネタを初めて見たときに僕が感じたそのエネルギーの行く末が楽しみでなりません。
岩崎う大 1978年東京都生まれ。早稲田大学卒。かもめんたるとして槙尾ユウスケとコンビを結成。キングオブコント2013年優勝。お笑い芸人だけでなく、脚本家、放送作家、漫画家として多彩に活躍中