ヒット曲『愛は勝つ』で知られる歌手のKANさんが、11月12日に亡くなった。61歳という若さでの訃報は世間の悲しみを誘ったが、その独特な葬儀のスタイルが注目を集めている。
独特な葬儀のスタイルだったKANさん、葬儀の流行り
近親者のみで行われた葬儀・告別式では、文豪・夏目漱石の肖像を模した遺影が祭壇に飾られた。これはKANさんのアーティスト写真で、本人の意向で選ばれたものだという。
そして、お通夜の参列者に配られたのは、カラフルなパッケージのポップコーン。ドラマーの清水淳は自身のSNSで《葬儀の服装とバランス悪い》《最高だね》と投稿した。
タオルやお茶など一般的な返礼品と比べると、かなり自由で個性的なセレクトだ。実は最近KANさんのように自分らしく、常識にとらわれない葬儀のスタイルが広がりつつある。自由なスタイルの提案に定評のある鎌倉自宅葬儀社・馬場偲さんにお話を聞いた。
「関東近県にお住まいの元大工さんの例ですが、ご自分で建てた家に愛着があるため、在宅医療と在宅死を希望されました。普通は火葬まで2~3日ですが、海外で結婚された娘さんを呼び寄せるため、10日ほど自宅リビングにご遺体を置いて、ゆっくりとお別れの時間を取りました」
遺体はエンバーミングと呼ばれる技術で殺菌消毒・防腐や修復をした後に化粧を施し、生前に近い姿に整えられた。火葬場に行くまで、妻や娘が川の字になって眠ることもでき、しっかりとお別れを告げられたそうだ。自宅葬の大きな特徴は、生前と変わらぬ環境で遺族が見送れること。故人が生前可愛がっていた犬が遺体の足元に自然とうずくまるなど、微笑ましい光景も見受けられるという。
「皆さん、以前は受け身だった葬儀に対して、この15年ぐらいはインターネットの普及でがらりと変わってきた感じがあります。旧来の形式ばった一般葬に疑問を持たれる方が増えてきました」(馬場さん、以下同)
費用に関しても、葬儀の松竹梅の差や祭壇の相場もわからないままに払っていたのが変わってきたという。
「究極の『直葬』といって、通夜も告別式も行わずに火葬だけをするような人も現れました。
一時期、DIY葬がバズったことがあります。葬儀社を通さずに、全部自分でやる葬儀のことです。
ご遺体はレンタカーで移動。ドライアイスは近所のドライアイス屋さんで買ったりして、棺はネットで購入。アマゾンや楽天でも買えます。火葬も自分でオンライン予約して火葬場へ。
確かに、葬儀屋というのは資格がいるわけではないですから、自分で1から10までやろうと思えばできます。受け身ではなく、主体的に葬儀に向き合う。そういう意味でDIY葬という選択は正解だと思っています。無論、ご遺体の管理など、専門的な知識が必要な部分もありますが」