目次
Page 1
ー 再発や転移したがんは“治せない”
Page 2
ー “いつか終わる”標準治療
Page 3
ー あきらめられないなら退院して“在宅医療”に

 日本人の死因1位のがん。現在、日本ではがん患者が増え続け、それに伴い、がん患者の家族も増えているが、「患者さんやご家族に伝えたいことがある」と言うのは、厚生労働省でキャリア技官を務めてきた中村健二医学博士だ。

がん患者さんは病院にダラダラといつづけてはいけません。特に再発や転移した患者さんは、治療を終えたらなるべく早く退院すべきです」

 中村先生は、慶応義塾大学医学部や米国イエール大学医学部大学院で学び、厚労省の技官として長年、がん医療の現場を行政面から支えてきた人物。その人がなるべく早く病院を出ろとはどういうことなのか、話を聞いた。

再発や転移したがんは“治せない”

 現在、がんの5年生存率はおよそ65 %。がん患者が10人いたら6~7人は5年後も生きていることを示している。“がん=死の病”と考えられていたひと昔前と比べると格段に生存率が向上したが、“再発がん”や“転移がん”にはまだ大きな問題が残っているという。

がんになっても手術して切り取れればいいのですが、近年、特に問題になっているのは再発や転移した患者さんです。高齢化が進み再発や転移した患者さんが増えていますが、そうしたがんは基本的に手術できず、抗がん剤によって延命するしかありません」(中村先生、以下同)

 それでも抗がん剤が効き続ければいいのだが、たいていはしばらくすると効かなくなり、使える抗がん剤の種類にも限りがあるため、いつかは主治医から「もう治療法がありません」と言われることが多い。その後は緩和ケア科に移ることになり、そこでは積極的な治療はせず、余命が短くなるのをただ待つことになるのだ。

「緩和ケアにももちろんいい面があります。医療用の麻薬などを適切に使える医師が痛みをうまくコントロールしてくれたり、メンタルケアなどでおだやかに死に向かう準備を整えてくれたりもします。でも、治療法がなくなったからといって、みんながみんな寝たきりというわけではなく、ピンピンしている人もいますので、治療をもっと続けたいと考える患者さんやご家族がいるのも事実です

 そういった人々が頼るのが“標準治療以外の治療”だが、そこにも問題があるという。