535億円という数字は県内総生産の2・4%にあたり、県民1人に換算すると約7万円の付加価値になるほどでした。大河ドラマの影響力はすさまじく、2009年以前の高知県の平均観光客数は年間約310万人前後でしたが、2010年は435万まで急増し、龍馬関連施設に関しては爆発的に来場者が増えたほどです。桂浜にある坂本龍馬記念館は、例年15万〜20万人の入館者数なのですが、2010年は2・7倍の48万人が訪れる大盛況ぶり。桂浜周辺の交通渋滞を緩和するために、GWなどは県の職員が交通整備のお手伝いに行くほどでした(笑い)。
とはいえ、放映翌年はバブルの反動で例年よりも観光客数が落ち込む現象が起こることをほかの自治体のデータから察知していました。そこでわれわれは、図々しくも(笑い)、翌2011年も『志国高知龍馬ふるさと博』と題した博覧会を開催し、ドラマで使われた龍馬の生家のセットをJR高知駅前に常設するなど新しいスポットを作ることを心がけた。おかげさまで、この年も年間約388万人の方に足を運んでいただく結果につながりました。
また、リピーターを増やすために、各観光施設のスタンプを集めていくことでランクが上がり、それに伴い高知県で受けられる特典内容も向上していく「龍馬パスポート」を作成。9万人の方にご利用いただき、2013年のデータではリピート率も8ポイントほど上昇していることがわかった。現在は年間平均観光客数が約400万人にまで飛躍していますから、大河を境に観光対策が劇的に変化したのは間違いありませんね。
実は、高知県は2006年大河ドラマ『功名が辻』の際も観光誘致に力を注いでいたのですが、このときは108億円という経済効果にとどまった。「観光客が高知城周辺しか訪れない」「地域の盛り上がりが不十分」といった問題点を洗いざらい見直して、再びめぐってきたチャンスを生かそうと尽力した背景があるんです。
ですから、『龍馬伝』のときは、高知市だけでなく高知県全土で盛り上げようと企画しました。西にはジョン万次郎ゆかりの地がある、西の真ん中には脱藩の道がある、東は岩崎彌太郎ゆかりの場所がある、そのようにサテライト会場を各地に置いて、全土を巡ってもらえるような工夫をしたんです。
高知県は多くの歴史的ヒーローや偉人を輩出しているため、大河ドラマの恩恵を受けやすい場所だと思います。観光にとっても大きな財産です。だからこそ、使命感や責任感を忘れずに歴史の産地として力を注いでいきたい。大河ドラマがあることで、われわれも気を引き締めることができるんです。
取材・文/我妻アヅ子