ラーメンの定義はあいまい

ラーメン評論家の山本剛志氏は今回の発見に関してこう語る。

「今回の精進汁で作る『経帯麺』はいわゆる“ノンアニマル”(動物系不使用)の麺料理。動物系全盛の後、今は一周して『ビーガン』など動物系を使わないラーメンが進化してきています。今の流行に通ずる部分があるのが面白いですね」

「経帯」とは巻物の帯のことを指す(筆者撮影)
「経帯」とは巻物の帯のことを指す(筆者撮影)
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 ただ、今回発見された「経帯麺」は「中華麺」のルーツではあるが、「ラーメン」ではないだろう。「ラーメン」は新横浜ラーメン博物館の定義するとおり、「中国の麺料理と日本の食文化が融合したもの」であると筆者は考える。

 その点ではまだ「ラーメン」といえるものではなさそうだ。水戸光圀が食したものには「火腿」という中国ハムが使われていたという説もある。もしかしたらこちらは「ラーメン」と呼べるのかもしれない。なかなか定義があいまいなだけに、起源を固めるのは難しそうだ。

 なぜ、これまでこの史実が見つからなかったのか。『居家必要事類』は大変有名な百科事典だったにもかかわらず、研究者の中ではかん水に誰も注目してこなかったため、今まで見つからなかったのではないかと考えられる。

 新横浜ラーメン博物館の中野氏は語る。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

「庶民の文化史にはまだまだ見落としがあるかもしれないですね。中華麺としてはおそらくこれが起源となりそうですが、ほかの食文化もまだ掘ってみる価値がありそうです」

 これを機に、それぞれの食文化のルーツを調べ直してみるのも面白そうだ。


※けん=石へんに咸


井手隊長(いでたいちょう)◎ラーメンライター/ミュージシャン 全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。るるぶNEWSへの連載の他、コンテスト審査員、番組・イベントMCなどで活躍中。 自身のインターネット番組、ブログ、Twitter、Facebookなどでも定期的にラーメン情報を発信。 その他、ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。