「午前2時を過ぎてもなかなか寝付けない……」

「身体はクタクタに疲れているのに、布団に入ると目がさえてしまう……」

 日頃のストレスからイヤなことを思い出し、アレコレ不安を感じて眠れなくなることは誰でもあります。医師から睡眠導入剤を処方されて薬を服用している人も少なくないでしょう。眠れなければ、日常生活はおろか、仕事にも支障が出るのですから、薬を活用するのが“絶対悪”とは言えません。

 ただ、誤解を恐れずに言うのであれば、私は「睡眠薬」の服用をオススメしません。

 拙著『読むだけで深~い眠りにつける10の話』(あさ出版)でも述べているように、睡眠薬とは強制的に脳を眠らせることで睡眠をもたらすからです。睡眠薬を使っている人から「眠れるけど疲れは取れない」「カラダがだるくなる」という声を聞くのは、睡眠という行為が自然な形で行われていないためです。

 睡眠薬には「耐性」の問題もあります。

 使い始めた当初は眠れても徐々に効き目が弱くなり、次第に睡眠薬の量が増えてしまいます。つまり、服用すればするほど眠れなくなってしまうのです。

 実際、イギリスでは睡眠薬を処方するとき、1か月分以上与えてはいけないという法律があります。最新の国際的な睡眠障害診断基準の第3版では、3か月以上不眠が続くと、その状態が固定してしまう場合が多いため、3か月以内に不眠を改善することが勧められています。つまり、ヒト本来の睡眠力を取り戻すためにも、薬だけに頼らず、身体に備わっている自然の力を使うのが理想といえるのです。

薬に頼らず、身体への負荷がないように眠気を高める方法とは?

 そこで私が推奨しているのが、「自己暗示」を活用した睡眠法です。

 これは、「眠りを誘う自己暗示の技法」を用いた自己暗示文を黙読してもらうことで、その人の潜在意識にある「眠れない」という思いを取り払い、眠気を誘うようにする方法です。

 そもそも人は何か作業に没頭するなどの集中状態に入ると、潜在意識が表出しやすくなります。つまり、外部の影響を受けやすい状態が整うのです。それゆえ、自己暗示文を読むことで、「眠れなくて困っている」という人の潜在意識にも「読めば眠れる」という意識が刷り込まれ、少しずつ不眠状態が改善できるようになるのです。

『読むだけで深~い眠りにつける10の話』(あさ出版)※記事の中で画像をクリックするとamazonの紹介ページに移動します

 この自己暗示文は「エリクソン催眠」をベースにしたもので、ふだん目にする文章と違い、一見なじみのない言い回しや表現を使っています。これらの表現には、『読み手の内側(内面)に意識を向ける』『「潜在意識」にストレートに入り込む』という特徴があり、情景をイメージしながら、リラックスすることで寝つきやすくなる効果があります。

 睡眠薬が「眠らせてもらう」という受身的な手法だとすれば、自己暗示文を読んで眠るとは、「自分から積極的に眠る」という主体的な手法です。睡眠薬を使う前の状態、つまり布団に入って自ら眠ろうとする元の状態に近づける効果が期待できるため、身体にも負荷が少なく、快適な睡眠環境を取り戻してもらえる手法といえるのです。「眠れなくてつらい」「寝つきをよくしたい」という方は、この手法で不眠から抜け出すきっかけが見つかるかもしれません。

 では、さっそく自己暗示文の一例を次ページでご紹介しましょう。