日本人観光客向けの広告宣伝?
そんな日本人の役者に与えられる役は“典型的な日本人”を体現した役だという。
「最初の入り口はみんな“日本人役かアジア人役”として、いかにも“ザ・ジャパニーズ”なキャラを演じるのでは。まずは何かに出演しないと認識さえしてもらえません。その後はガッツと語学力。英語が話せなくても使ってもらえるのは、最初の1回くらいではないでしょうか」(今さん)
その点、語学問題をクリアしているのは、7歳から拠点をアメリカに置いているマシ・オカ。彼はアメリカのお茶の間で、いちばん知られている日本人といっても過言ではない。
「ドラマ『HEROES/ヒーローズ』などに出演して人気を博していますが、オタク、サラリーマンという典型的な日本人イメージで人気。一方で、そういった役しかこないのがジレンマだそう」(今さん、以下同)
語学の壁とイメージに阻まれながらも、アメリカに拠点を置いて活躍しているのは、真田広之。映画だけでなく、大作ドラマシリーズ『LOST』『HELIX』『エクスタント』などに出演している。
「殺陣と演技力も高く評価されているし、何より英語力がある。テレビドラマの現場のスピード感はすさまじいので、ドラマで活躍できることは語学力の高さを証明しています。真田さんはドラマの現場について“しんどかった”と言っていました」
デーブ氏が“女版・真田広之”と称するのは、’06年に映画『バベル』に出演した菊地凛子。
「彼女も海外を中心に活動しているので、英語の発音が上手。日本の芸能界よりも外国のほうが肌に合っていたのでしょうか? ハリウッドだけでなく、たくさんの国から声がかかっているし、アメリカのテレビ番組にも出演しています。今までにない成功例でしょう」
菊地と同じ『バベル』に出演した役所広司など、「シネフィル(映画通)に知られている俳優は少なくないけれど、局所的な人気」というレベルだそう。
「千葉真一さんらアクションスターも、タランティーノら有名監督が推さなければ見る人も少ないですし、香港アクションと同じくらい日本の任侠映画も人気なので、それなりの人気はあると思います」
ブロードウェイ・ミュージカル『シカゴ』に出演した米倉涼子も、今秋に凱旋公演が決まっているが、現地では評判のよしあしどころか話題にのぼることさえなかったそう。それでも海外でキャスティングされるのは、こんな裏事情もあるとデーブ氏は語る。
「米倉さんくらいスタイルがよければ、海外の人と並んでも見劣りしません。渡辺謙さんも身長が高く、顔の表情で演技ができますしね。
ただ、日本人をキャスティングすることにはある思惑も。日本人観光客向けの広告宣伝になると思っているんです。それゆえに急に主役に抜擢されることもあるんですよ。海外公演に出ることは、役者として箔もつきますし、凱旋公演の宣伝にもなりますから」
このように、日本人の役者たちは海を渡っただけで成功とはいかないようだ。
「片足が飛行機に乗ったままのような状態はNGなんです。今後進出する方にはぜひ、日本とアメリカの仕事を割り切って真剣にやってほしいですね」(デーブ氏)
スターたちはハンデを背負いながら、アメリカンドリームを追いかけている──。