ブログやツイッターでの婚活指南が好評のライター・仁科友里さんが、今話題のドラマ『過保護のカホコ』を参考に、“リアル・カホコ”の婚活を考察します。

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 水曜ドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ系)がまもなく最終回を迎えます。

 最終回の予告から察するに、カホコ(高畑充希)と初(竹内涼真)は結婚式を迎えそうな気配です。

右からカホコ役の高畑充希、母・泉役の黒木瞳

 ずっとお母さん(黒木瞳)の言うとおりに生きてきたカホコが、反対を押し切って結婚するということは、母親からの独立宣言とも言えるので、めでたしめでたしと言いたいところです。しかし、このドラマは「母娘問題は連鎖する」というメッセージを秘めているように私には感じられました。

 母親思いの娘と、過干渉な母子関係は紙一重です。

 たとえば、私に相談を寄せたDさんは、婚活中の35歳です。お見合いの開始早々、お父さんから電話がかかってきて、お母さんの体調が悪いことを知らされました。心配になったDさんは、お見合いを切り上げて帰宅しました。今回に限らず、Dさんのお母さんは、何か突発事項が発生した場合は、必ずDさんに連絡をしてくるそうです。

 みなさんならどうしますか?

 もし、Dさんのお母さんが家に一人でいて、一人では対応できない、もしくは家に誰かいるけれど、救急車を呼ぶような状態であれば、Dさんはすぐに帰るべきだと思います。でも、Dさんの場合、家にお父さんと妹さんがいて、病気自体も緊急を要するものではなかったわけですから、お見合いを続行してよかったのではないでしょうか。

 なぜ、Dさんが家に帰ったのかを聞いてみると、「母は私でないとダメだから」という答えが返ってきました。Dさんのご両親は仲が悪いというわけではありませんが、会話はほとんどないそうです。Dさんはお母さんが何を欲しているかがわかるため、自然とお母さんもDさんを頼りにするそうです。

 不仲ではないけれど、お父さんとお母さんのコミュニケーションがしっくりいっていない。それは、このドラマも一緒です。

 カホコのお母さんとお父さん(時任三郎)は本音で物を言うことはありません。それは、カホコのばあば(三田佳子)も同じです。命に関わる病気を宣告されたにも関わらず、ばあばは「じいじがかわいそうだから」という理由で、病状を隠します。その代わり、「家族のこれからをカホコに託す」と重い責任をカホコに背負わせます。

 過干渉な母親や、依存症を抱えた叔母夫婦、非行に走りつつある従姉妹など、専門家の手を借りなくてはどうにもならないのは明らかです。ばあばには三人の娘婿もいます。にも拘わらず、社会経験もない、群を抜いて幼いカホコをノミネートした理由を、ばあばは「カホコが、家族のことを一番愛しているから」と説明します。これはばあばが「家族をまとめるのは、女性の仕事」「家族は愛でできている」と信じているからではないでしょうか。

 カホコの家庭では、「パパにカホコのことはまかせられない」とお母さんに言われるぐらい、お父さんはないがしろにされています。独善的なこの状態は見方を変えると、「女性(お母さん)が中心になって家族をまとめている」と言えるでしょう。また、お母さんは初に「私以上に、カホコを幸せにする覚悟はあるのか?」とにじりよっていますから、お母さんの過干渉的な行動は「愛すればこそ」と考えることができます。

 つまり、お母さんは、ばあばルールを守っているのです。ばあばはお母さんに子離れを促すなど、カホコの味方をしているように感じられます。しかし、「家族をまとめるのは、女性」という刷り込みや、ばあばが子ども時代のお母さんに厳しくあたったことの反動で、お母さんがカホコを極端に甘やかしたと考えると、母娘関係をややこしくしている元凶は、ばあばと言えないこともないのです。

 ばあばとお母さんの影響を受けたカホコも、当然「家族は愛でできている」「人を幸せにするのは、愛」論者ですが、カホコのお父さん方の祖父母はそこまで家族に対する思い入れはありません。おじいさんは自分の意見を言わず、眠りこけてばかり。離婚して実家に戻り、借金まで抱えている叔母さん(濱田マリ)に至っては「自分は愛のない人間」と自己分析しています。

 しかし、この家族に「居場所のない子どもたちのための学童クラブを作る」という目的ができた時、思わぬ団結力を見せます。おじいさんは教員免許、おばあさんは調理師免許を持っていて、所有する不動産もあることから、学童のオープンが比較的簡単に作れることがわかったからです。叔母さんは保育士の資格を取るという目標もできました。この家族に連帯をもたらしたのは、愛ではなく、仕事(資格)とお金(不動産)です。ばあばルールは「家族の幸福を作るのは女性」ですが、おじいさんの家庭は「家族一人一人が、自分の持ち味を活かして働くことで、幸福になる」という“分担制”を取っています。

 家族の在り方に正解はありませんが、カホコの置かれた状況から考えると、カホコに必要なのは、“分担制”方式ではないでしょうか。