「よくいじめが問題にされますが、決定的な要因となるのは少数です。取材してみると、1つの事柄ではなく、いくつかが重なっていて、中でも3つの要素が大きく影響していると感じています」(石井さん)

「行きたくない」という声を受け止めて

 1つ目は学力競争にさらされ、友達は全員ライバルの中で蹴落とし蹴落とされて毎日を過ごしていることでストレスフルになっている。

 2つ目は親子関係の歪み。親は子どもが学校で勉強して、いい成績をとり、社会に出ていい仕事に就いてほしいと願い、期待する。子どもはそれに応えようとするが、応えられなくなったときに、苦しくなり、学校に行けなくなる。

 3つ目は子ども間の人間関係だ。子ども電話相談では、この6年間ずっと1位が続いている。スクールカーストといわれ、自分より上位からいじめられ、自分より下の者をいじめる。大人の目にはなかなか映りにくいが、そんな緊迫した関係が子どもの社会にあるのだ。

 だからこそ親は、

「目の前に見えることだけで解決しようとしないで、ゆっくりと話を聞き、行きたくないという声を受け止めてあげてほしい」(石井さん)

「教育機会確保法・不登校対策では“休むこと”の権利を認めると同時に、“すべての子どもたちが安心して学べる環境を作ること”も定められています。ただ具体的な支援はこれから。

 今は教育委員会などが設置している教育支援センターや、民間のフリースクールが、不登校の子どもたちを受け入れていますから、そういうところに通うのもひとつの方法です」(尾木ママ)

 フリースクールは全国に400以上もあると言われている。NPOが運営しているところもあれば、不登校の子どもの親などが自宅を開放しているところもある。

 フリースクールに通っても学校に通ったことにはならないが、もともと通っていた小中学校の校長先生の判断で、出席扱いができるようになっている。

「親も不登校の当人も、学校に行かなくてもいいと思っている人は少数です。フリースクールから、通信制の高校に通うこともできる。僕自身も、不登校になった中学時代から高校にかけて“もう自分の人生は終わった”と思っていたときもありますが、フリースクールに通っているうちに道が開けました。

 自分の可能性を信じていい。そこは声を大にして不登校の子どもたちにも、親たちにも伝えたい」(石井さん)