主人公のアキが、初めてカイト(高橋一生)に出会って、“自分の夢は女優なんだ”と打ち明けるシーンがすごく好きなんです。アキにとって、自分の夢を初めて他人に打ち明けて、受け入れられた瞬間でもあって。私も小学校3年生くらいから“女優になる”って、漠然と思っていたんです」

 映画『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ』で、初主演を飾った桜井ユキ。30歳という節目を迎え、遅咲きながら注目を集めているが、ここまでの道のりは、決して平たんではなかった。

高校の進路相談では“私、女優になるために東京に行くんで……”ってずっと言っていました。でも、実際に行ってみるとすぐに“もう東京いやだ!”となってしまって。“お芝居をやらなきゃいけない、好きにならなきゃいけない”という圧のほうが自分の中で強くなって、東京自体が苦痛でした」

 1年あまりで実家のある福岡に戻り、23歳まで飲食業や実家の手伝いをしていた。

「年齢的に最後のチャンスと決めて再び上京をしたときに、10代のときに声をかけてくださった方から“どう? やる気になった?”と連絡をいただけて。10代のころは、新しく入ってくるものを拒絶していた感覚があったのですが、23歳になると自分から求めている部分が強くなっていました。なので、“あ、今回は大丈夫だな”って自然と思えていましたね」

 2度目の上京を機に、当時のマネージャーに1から教え込まれた。特に“芝居”というものに向き合うきっかけとなったのは、美人女優が役のために美を捨て、醜い容姿へと肉体改造を行い大きな注目を集めたあの映画だった。

『モンスター』というシャーリーズ・セロンの作品を、お芝居を本格的に始めようとしていたときに見て、とても衝撃を受けました。“これが役者さんなんだ”と思えた最初の作品です」

 園子温や三池崇史、田口トモロヲなど、名だたる監督の作品に出演しながら、機が熟すのを待った。30歳目前にして、ようやくつかんだ“主演”の座――。

「“本当に大変だけど、ぜひやってほしい”と監督やプロデューサーさんから言われました。でも、台本を読ませていただいて“もし私が断ったら、ほかの誰かがやるんだろうな”って考えたら、すぐに“やる!”って言っていました。“え、ちょっと待って、脱ぐよ?”って言われても“やる。やらせてください!”って。何の迷いもなかったです」