「やりたくない」と泣く職員も
当初の寄付の予想は100万円ほど。ところが蓋を開けてみると、予想の10倍以上の約1100万円の寄付金が集まった。お金の使い道は、
「エサ代、医療費、(しつけや世話をする)ボランティアさんへ現物支給する首輪、リード、ペットシート等の代金などです」(鳴海係長)
保健所の努力以外にも、ボランティアの力添えがなければ、犬の殺処分ゼロは達成できなかったと感謝する。
「センターから引き取って飼い主を探してくれるのがボランティアさん。本当に頭が下がります。1頭につきエサやペットシートなどをワンセット渡していますが、医療費がどうにかならないか、という声をいただいています。病気の犬や猫を引き取っていただいた場合、飼い主が見つかるまで病院代はボランティアさんの自腹。今後、検討する予定です」(鳴海係長)
今年からは寄付金の用途を猫にも拡大しているが、
「数が多すぎるのが一番の問題。当センターも、現状はぱんぱん。どうしても殺処分せざるをえない。昨年度は399頭の猫を殺処分しましたが、“やりたくない”と涙を流す職員もいます」(鳴海係長)
犬と比較し猫の殺処分が多いのは全国的な傾向だ。特に生後間もない乳飲み猫は数時間おきのミルク、お尻ふきと負担が多く面倒を見きれないのが現実。
そんな中、いち早く殺処分ゼロを達成したところがある。神奈川県が所管する県動物保護センターだ。犬は4年連続、猫は3年連続殺処分ゼロを更新している。
同センターを見学させてもらった。犬・猫は現在、各40頭ほど収容されている。猫舎に入ると「にゃあにゃあ」と甘える声が。ケージには《人なれ強化中。たくさん遊んでね》と書かれたプラスチックの板がぶら下がっている。
「猫はなかなか人なれしないんです。引っかいたり、噛みつく子もいる。乳飲み猫は100%、ボランティアの方が引き取ってくれています」
そう話すのは同センターの岩屋修課長。地下の犬舎も案内してもらった。
「昔はここにいっぱいの犬が収容されていました。電話で、心ない言葉を言われたこともあります。職員たちはみな、なぜ殺さなければならないのか葛藤していました。
最後は、処分室の箱の中に二酸化炭素を注入して窒息死させます。幼い犬や猫は呼吸が浅いので死にきれない場合がある。そのときは、麻酔などを打って殺すんです」