テレビを見ていて「ん? 今、なんかモヤモヤした……」と思うことはないだろうか。“ながら見”してたら流せてしまうが、ふとその部分だけを引っ張り出してみると、女に対してものすごく無神経な言動だったり、「これはいかがなものか!」と思うことだったり。あるいは「気にするべきはそこじゃないよね〜」とツッコミを入れたくなるような案件も。これを、Jアラートならぬ「オンナアラート」と呼ぶことにする。(コラムニスト・吉田潮)
綾瀬はるか

オンナアラート#2 ドラマ『奥様は、取り扱い注意』

 元・工作員の女が足を洗って、穏やかで温かい家庭を築こうと専業主婦になる物語、主演は綾瀬はるかの『奥様は、取り扱い注意』(日テレ系)である。綾瀬はセレブ奥様に落ち着いたが、ご近所で起こるトラブルを秘密裏に解決していくハメに陥る。

 そもそも正義感が強く、困っていたり泣いている人をほうっておけない性分だ。良いドラマと思うが、穏やかで温かい目では観ていられない。そう、オンナアラートが鳴っちゃうからね。

 綾瀬は夫・西島秀俊に尽くす。とにかく尽くす。セレブ生活のわりに、着る服と作るメシは案外質素だったりする。まあでも、完璧に食事を用意するだけすごいと思う。そもそも綾瀬は料理が苦手なのに、そこ頑張るんだ……と思う。あれだけの豪邸に住んでるのだから、他にいくらでも方法があるだろうに。

 そもそも、綾瀬が自分の行動をいちいち夫に相談するところも違和感。これは個人的な感覚だが「頭ポンポン」する男は基本的に女を見下していると思う。ファンタジーとかプレイの一環なら一向にかまわないが、日常で「頭ポンポン」されてなだめられるというのは、侮辱以外の何物でもない。あれ、普通にやられたら怒ったほうがいいよ、女は。

身体が引き締まらないと抱いてくれない

 そして、夫の帰宅時には玄関で毎度お出迎え。料理教室に着物の着付けと習い事もするわ、セックスレスを危惧してあの手この手で工夫するわで、綾瀬は相当の努力を自ら課している。そして、子どもを欲しいと思っている様子。

 ところが、夫の西島はのらりくらり。セックスもそもそも消極的だし、子作りの話は巧妙に避ける。もちろん、今後の展開で西島の背景も描くだろうから、そこになんらかの理由があるはず。でも、全体的に男の妄想と願望を優先しすぎて、女は疲弊する構図なのだ。

 たとえば第3話は、ボスママ(青木さやか)からいじめられているママ(小野ゆり子)に綾瀬がトレーニングを指南し、いじめを解消させるという話だった。一緒にトレーニングをした綾瀬は、西島から身体が引き締まったと言われ、セックスに至るという結末に。

「え? ウエストが引き締まらないとセックスしてくれないのかッ!」 

 あのシーンでとてつもない絶望感を味わった。つうか、それって男の性欲の論理じゃね? 

 世間では毎回「ラストシーンで西島と綾瀬がラブラブになるのがキュンとする」的な意見が多いようだが、女にだけあれやこれやと条件を突きつける関係は対等じゃないし、綾瀬自身の欲望がないがしろにされているのがいたたまれない。