傾向を活かし、適職に出会うケースも

 まず、自閉スペクトラム症(ASD)。相手の表情を読み取ったり、気持ちを推測したりすることが苦手で、人付き合いが得意でない人が多い。また、こだわりが強く、自分の習慣や予定に変更があると大きな不安や苦痛を感じる。

 例えば、あるASDの男性の場合。普段は腕のいい職人だが、身内が事故で病院に搬送された際、付き添いもせず帰宅してしまった。周りが驚くと「寝る時間だったから」と答えたとか。

「以前は『自閉症』、『アスペルガー症候群』、『広汎性発達障害』などと診断されていた人たちが現在はすべてASDと呼ばれます。知的障害の有無など違いはありますが、特性が共通しているため、ひとくくりにして軽度の人にも支援ができるようになりました。

 ひとつのことにコツコツと取り組むことが得意な人も多いので、長く継続的に取り組める職人や研究職などに向いている人もいます」(緒方さん、以下同)

 注意欠如・多動症(ADHD)はじっとしていられない、人の話をさえぎって話す多動性と、興味のあることに過度に集中する一方、ほかのことには注意散漫という注意力の特徴がある。加えて、衝動性が顕著で刺激を好む傾向も。

「成長とともにエネルギーが落ち、脳内のホルモンバランスも変化して、多動は思春期に入ると大きな行動的なものは落ち着いてくることが多いです。大人になると忘れ物が多い、締め切りを守れないといった注意力が問題になりやすいですが、活動的で人付き合いもよいので適職と出会う人も少なくありません」

 ADHDのある女性は、切らした調味料を“買わなきゃ”と思い込み、何個も同じ商品を買ってしまった。誰でも経験しそうな話だが、特にADHDの当事者にとっては「あるある」エピソードと言える。

 そして、もうひとつが限局性学習症、いわゆる学習障害(LD)で、知的な能力は一般レベルかそれ以上だが、ある能力だけが極端にできないというのが特徴。ハリウッドスターのトム・クルーズは文字が読めない失読症を公表しているが、ほかに文字を書く、計算するのが苦手なタイプも。

「本人が努力しても直らず、教師には“努力が足りない”と責められ、勉強嫌いになる子どもが多い。特に文字の読み書きについては効果的な療育法がわかってきました。LDで支援の相談に来る人は少ないのですが、ぜひ相談してみてください」