日本と出会い20年。2017年、憧れ続けた“日本人”となったクリス。帰化、ベスト・アルバムのリリース、第2子の誕生。節目の年に改めて考える日本についてインタビューしました──。
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「デビューしてから、あっという間の5年でした。カバーにオリジナルと、7枚もアルバムを出せて、47都道府県ツアーもできて」
なめらかな日本語で語り始めたクリス・ハート。
12歳のときに聴いたKiroroの『未来へ』がきっかけでJ-POPに興味を持ち、26歳で日本へ。日本の音楽を愛する外国人が競う音楽番組に出演すると、心に響く美しい歌声で見事、優勝。その翌年には、メジャー・デビュー。まさに“シンデレラ・ストーリー”を歩んできた。
「間違いなく、すごくラッキーだったと思います。こんなにチャンスがあるキャリアって、そんなにないかなって。デビューした年に、松田聖子さんと一緒に紅白に出場できているんですから。でも、ラッキーじゃないことも起こってるんですよ」
そのひとつは、2016年5月、初めて武道館のステージに立ったとき。ご両親がアメリカから初来日し、涙ながらに抱き合い、感動を分かち合っていたそのとき、いまは元気いっぱいの息子さんが入院するという出来事が! そして、
「歌をやめたいと思うことは、何度もありました。スケジュールが詰まっているのに全力で歌いすぎて、声が出なくなってしまうこともあったし、音楽と家族との関係をどう両立させていくかでも葛藤しました。
実は、10月にリリースした初のベストアルバム『こころのうた』に収録している曲のすべてを、もう1度アレンジしなおそうという話もあったんです。でも、昔の音源を聴いたら、当時の思いが蘇ってきて。
木山裕策さんの『home』やオリジナル曲『I LOVE YOU』は、むしろ限界で歌っていることで伝わってくるものがあった。だから、“これだけ歌えるようになりました”ということよりも、僕が歩んできた5年、いや、日本について勉強してきた20年を感じてほしいと思いました」
そう自信作について語ってくれた、このインタビューをしているとき「2人目が生まれるんです」と、うれしそうに笑顔を浮かべていたクリス。先日、第2子となる女の子が誕生したとブログで発表した。
「できるかぎり妻のサポートがしたいと思って、全然、寝てません。子育てに参加しすぎてて(苦笑)。歌いながら、息子の離乳食を作ることもありますよ。
料理していると、音楽のアイデアが浮かんでくるんです。でも、息子は、僕の歌声に全然、興味がないみたい(笑)。知り合いからは“クリスの歌声で(子どもが)寝ちゃう”って言われるんですけど、息子に子守唄を歌うと大声で“イヤー!!”って。それに、僕がテレビに出ている姿を見ると、すぐにチャンネルを変えちゃう(笑)。
まだ、僕の歌が、彼の満足するレベルに達していないんだと思います。もう少しレベルアップしたら、“パパ、これだよ!”って言ってくれるかも(笑)」
4月に夢だった日本国籍を取得。それは、ふたりの子どもたちのためでもある。
「日本人としての責任を持って、日本の未来をつくっていきたいと思ったんです。誰かの助けになる、誰かを幸せにする音楽をつくっていきたい。その気持ちはデビュー前から、ずっと変わらないですね」
インタビューのあと、2018年春より育児&音楽勉強のため活動休止することを発表したクリス。“レベルアップ”した彼の音楽を楽しみに待ちたい。
※原稿内に一部誤りがあったため修正しました(2017年12月29日22:00)