「昔から死とか自殺とか考えていたわけではないです」
どうせなら殺して欲しかった
都内在住のOL響子(27)は言う。学生時代から家族に特に問題はなく、良好な関係が続いていた。学校でも友人に恵まれ、成績も真ん中ぐらいで、平坦な日常を過ごしていた。しかし、高校時代に友人を交通事故で亡くした。
「彼女のことを好きだったし、とても仲がよかったんです。そんな人が突然亡くなってしまったことで、『人間はいつ死ぬかわからない』と思うようになり、死について考えるようになりました」
大学時代、響子は友人関係で悩んだ。ネットの相談サイトにアクセスすると、よく相談に乗ってくれる友人ができた。サイトのオフ会にもよく出かけ、実際にその友人と遊んだ。しかし友人がある日、自殺したことを聞かされた。
「その喪失感から、私自身も自殺を考えるようになる。飛び降りを何度か試みましたが、ケガをするだけで死ねませんでした。そのため、確実に死ぬ方法として、集団自殺を思いつきました」
自殺サイトで自ら募集すると、返事は数通あった。条件や日程の会う人は1人だけだった。下見をしようということになった。相手は見た目は30代後半で、サラリーマン風の男性だ。
レンタカーは響子名義で借りた。山中で場所を探していて、休憩をしようと駐車場に止めた。外でふらふらしていると、男が突然、襲いかかってきた。そして山中に放置された。
「抵抗はしましたが、どうなってもいいと思っていました。どうせなら、襲うのではなく、殺してほしかったです」
自殺サイトは自殺や犯罪の温床にすぎないのか。いや、サイト内での出会いによって、生きることに価値を見いだす場合もあるのだ。
東北地方に住むフリーターの美沙都(19)は「1人で死ぬのは怖い」と思い、集団自殺に関心を持った。自殺サイトで何度も呼びかけたことがある。高校時代に呼びかけた中には、小学生からの返信もあったという。
「小学生を巻き込むのは罪悪感がありましたので断りました。20代と30代の男性から返事があったので、駅で待ち合わせをしたのです。が、誰も来ませんでした」