僕の立場は
周りの人間が決めること

 プライベートでは、つい先ごろ、元幕内・陣幕親方の娘である一般女性と入籍し、結婚式を挙げていたことを公表し、マスコミをにぎわせた。

12月11日(月)、東京・紀伊國屋書店新宿本店にて、発売記念サイン会を開催。問い合わせは紀伊國屋書店新宿本店 TEL/03-3354-5702(10:00-21:00) 撮影/降旗利江
12月11日(月)、東京・紀伊國屋書店新宿本店にて、発売記念サイン会を開催。問い合わせは紀伊國屋書店新宿本店 TEL/03-3354-5702(10:00-21:00) 撮影/降旗利江
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「プライベートなことや結婚の質問をみなさんにしていただくのですが、とにかく忙しすぎてなかなか一緒にいられる時間がないので、面白いお話がないんですよ。先にもお話ししたとおり工房に寝泊まりすることも多いですし、とにかく働いてしかいないっていう毎日で……(苦笑)」

 職人と芸能人、“二足のわらじ”をはく彼の立場は、目まぐるしく変わっている。

「僕自身には“二足のわらじ”という感覚はないんです。テレビやイベントのお仕事も、あくまで“職人として”お声がけをいただいて、“職人として”お受けしているので。ですから、“イチ職人の結婚になんて誰も興味ないはず”と思っていた部分はあるんです。でも、芸能界でお仕事をいただく以上、自覚を持って対応することも必要なんだな、と。その点は申し訳ない気持ちですし、僕も勉強になりました」

 そして、こう続ける。

社会での立場って、僕が決めることではなく、周りの方が決めることだと思います。“君のことを芸能人だと思っているんだから”という人が増えていくのであれば、そういう方々に対して、当然ですが、僕もそう意識しないとやはり失礼ですから」

まず同世代に伝え
上の世代を変える

『生粋』の冒頭で、花田は「僕と同じ世代の人たちが自信をつかみ取るための“ヒント”を語ることができるはずだ」と綴っている。自分の立場は、周りの人間が決めると考える花田は、同世代の若者に対してどう考えているだろう。

「厳密に言うと、同世代に向けた言葉ではないのです。でも、これからの社会や生き方は、僕らが作っていかないといけない。僕ひとりの影響力なんて、ちっぽけで何を吠えたところで痛くもかゆくもないレベルだと思いますけど、僕の言葉で、結果的に、同世代の人たちが“こんな生意気なやつがいるんだったら自分もやれるんじゃないか”と少しでも思ってくれるのなら、結果として上の世代の方々、いまの“枠”だらけの社会を変える力のひとつになるんじゃないかって。どうせ書くなら、毒か薬かどちらかになればいいなと思っています

 たしかに、『生粋』の内容は荒々しさもある。好青年、優等生といった“花田優一像”とは異なる彼の真の姿が、読むほどに透けて見えてくる。

「“二世だ”“七光だ”という目で見られるのは覚悟していますが、そう言われるのならば、“上等だ。寝ずに仕事して、俺よりいい作品、いい本を作ってみてくださいよ!”って言いたいですね(笑)」

 生まれやルックスだけではない。この“二面性”の気質こそ、彼の大きな魅力なのかもしれない─。

『生粋(ナマイキ)』(主婦と生活社刊 税込み1188円)※記事中にある画像をクリックするとamazonのページにジャンプします

 

はなだ・ゆういち◎1995年9月27日、東京生まれ。靴職人。父は横綱・貴乃花(現・貴乃花親方)、母は元フジテレビアナウンサー・花田景子さん。15歳で単身アメリカへ留学後、イタリア・フィレンツェで靴職人に弟子入りし靴作りを学ぶ。2015年10月、修業を終え帰国して独立。都内の工房で靴作りに打ち込む日々を送る。

『生粋(ナマイキ)』
(主婦と生活社刊 税込み1188円)
話題の靴職人・花田優一、初の著書。生きにくい時代で、自分の働き方、あり方、生き方に、戸惑い立ち止まっているすべての人たちへ届けたいメッセージ。