何事も真剣に命がけで取り組めば夢は叶う

 吉村さんは発掘調査にかかる膨大な費用を集めるために、たくさんのメディアにも出演した。エジプト考古学への認知度を高め、支援を得る活動をしたのだ。

1966年、ダハシュールの赤ピラミッド前で。左端が吉村さん
1966年、ダハシュールの赤ピラミッド前で。左端が吉村さん
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 それによりやりすぎではないかと多くの批判も受けた。しかし、すべてはエジプト考古学を発展させるためと信じて貫いてきたという。

「お金がないと発掘できないんです。実際に第2の船を発見し、日本が発掘していいということになったのに、’90年代初めにバブルがはじけて、資金不足で続けられなくなりました。それから苦節15年、賛同してくれる企業の寄付により再開できるようになったのです」

 2017年6月、クラウドファンディング(アイデア起案者がインターネットサイトを通じて不特定多数の人から資金を募るしくみ)にも参加し、コンピューター上に復元図を作成する3Dスキャナーの購入費を募った。

 結果、目標2000万円のところを、2か月あまりで3200万円集まった。

「500人くらいの人が応援してくれて、8割は知らない人でした。みなさん口では応援してますよって言ってくれるんだけど、なかなか1口5000円も出してくれないんです。だからアクションしてくれた人がいたことがありがたかったですね。これから復元作業に3年、組み立てには5年かかるでしょう。死んでいられないんです!(笑)」

 吉村さんの人生訓は「夢は叶う」。何事も真剣に命がけで取り組めば、願いが叶うはずだと語る。

「74歳の今、学生を教えていていちばん悲しいのは夢を持っていないこと。夢が持ちづらい世の中だとか言われるけど、それは言い訳ですよ!」

 自分あっての社会であり、社会が悪いから自分がうまくいかないということにはならない、社会は動かせるものだという。

「だって僕が早稲田に入ったときは、エジプト考古学なんて日本のどこにもなかったんですから! それを知らずに早稲田に入ったんですよ」

 最初に学生部長が吉村さんに言ったのは、「エジプトやりたいなんて騒いでるけど、やってる先生がいないんだからできないんだぞ、あきらめて違うことやれ」という言葉。

「僕は“はい”と言って逆らわなかった。バカな話は長くなってもしかたないですからね。でも言うことを聞かなかったんです」