30歳を目前に、東京で編集の仕事をしていた頃、失恋と失業をほぼ同時期に体験し、先行きの不安を結婚することで解決しようと婚活に励んだが、逆効果だった。頑張れば頑張るほど精神的に追い込まれてしまう。

 いろいろあって、苦しみの反動で、日本を出て世界で婚活をすることを決意し、世界を旅しながら、日本の外の恋愛観、結婚観をレポートしてみることにした。

 すると、人生初めて訪れたパリでその後の人生を変えるほどの衝撃を受けることになる。パリでは、日本ともほかの国とも違う多様な恋や結婚観を実践している人たちが生きているのを目の当たりにしたからだ。「婚活などしている場合じゃない」。そう思った私はすぐさまパリへ移住した。

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パリに住む日本人女性も自由に生きている

 実際にパリに住んでみると、恋、結婚だけでなく、あらゆる多様な生き方、価値観があることがわかった。

 私と同じ日本人女性であっても、パリで周りの目を気にすることなく、軽く10歳ほど年下のパリジャンと恋をしていたり、事実婚をしている女性にも何人も出会った。

 最初から結婚はしないと決めて(男性側は、親の結婚生活を見て嫌気がさし、女性側は親の離婚を見て結婚はしないと決めていた)2人の子どもを産み、育てているフランス人カップルもいた。

 最近では、同性婚が認められたことにより、男性同士、女性同士で結婚しているカップルも増えているし、同性カップルがベビーカーを押している光景も見掛ける。

 また、カフェやレストランで、親と子で肌の色が異なる組み合わせの家族を見て、養子を迎えているんだな、と気がつくこともある。

 日本ではありえないと一番驚いたのは、幼児の頃韓国の道端に捨てられていた、という女性が、フランスの家庭に養子に迎え入れられて、後に大臣にまでなったことだ(元文化・通信大臣のフルール・ペルラン氏)。

 こうした生き方を目の当たりにして、いろいろなことに気がついた。それは、これまで生きてきた30年間、いかに自分が日本社会の「○○であるべき」という王道の基準に自分を合わせて生きていたかということだ。

 それが原因となって、重苦しい鎧(よろい)を着ているような「生きづらさ」を長年感じていたのである。