金メダル級の頑固さ
皮肉にもその最高難度の4回転ルッツでケガを負ってしまう。しかも、NHK杯はオーサーが胆のうの手術で来日せず。そんなときにアクシデントが起きてしまったのだ。
「羽生選手はケガをしてもすぐにリンクに戻って練習を再開しようとした。でも、痛みで脚が動かないことがわかり、戻ってきた控室前の廊下で泣き崩れたんです。カナダに戻ったあと、オーサーと“オリンピックでの目標は何か”をじっくり話し合い“歴史に残る連覇を成し遂げること”という答えを出しました。ルッツはずしの負けないプログラムで挑むことに決めたそうです」(同・フィギュア関係者)
元フィギュアスケート選手で解説者の佐野稔氏は、
「4回転ルッツの封印は大正解だと思います。ブランク明けの大一番の中で、ケガしたジャンプを跳ぶという大冒険は絶対に避けるべきです。羽生クンが'15年のグランプリファイナルで330・43点をマークしたとき、2種類の4回転ジャンプを跳んでいました。
今回の五輪でも、SPが『バラード第1番』で、フリーは『SEIMEI』と、そのときと同じ曲。そこに3種類の4回転ジャンプを加えるので、楽に330点を超えるだろうと思います」
ただ、シニア時代から羽生を見続けてきたスポーツライターの目には、常に強気の姿勢を崩さない彼が、世界中をアッと言わせるシーンが浮かぶという。
「今回は3種類の4回転を跳んだ、'16〜'17年シーズンと構成は似たものになるでしょう。このプログラムはフリーの最後のジャンプが3回転ルッツなんですよ。もしかしたら、超負けず嫌いの羽生選手は、オーサー氏に内緒でそこを4回転ルッツに変えて跳ぶ可能性もあるかもしれませんね。彼は頑固さでも金メダル級ですから(笑)」
2月7日に放送されたNHKスペシャルの中でも、若手の台頭について聞かれると、
《みんなが気にすれば気にするほど、斜め上をいけるよう、常に努力したい》
と、絶対王者らしいプライドをのぞかせていた。