店を開ける火曜日から土曜日は、朝3時前に起床。前日夜に仕込みをしたパンを早朝から焼き始める。焼くのも売るのも菅原さんひとりだ。同じパンだけだと飽きられるので、新しいパン作りにもチャレンジしている。
お客は1日20~30人。大食い女王の店と知らずに買いに来て、リピーターになる人も多い。
週に1、2回は来るという女性客は山型食パンをまとめ買いしていた。
「どのパンも決して安くはないけど、満足度が高いので結果的に高くないんですよ。食パンにバターやジャムを塗るだけで、すごく美味しくて、夫や娘にもほかのパンはもう食べられないと言われます」
店名にもなっているカンパーニュを食べてみた。フランス語で田舎という意味のどっしりとしたパンだ。食べごたえがあり、かむほどに深い味わいがある。
菅原さんにこれからの夢を聞くと、特にないという。
「夢を持っても現実は変わらないので、目先のことしか考えられないですね。励みはやっぱり数字です。売り上げは自分に対する評価なので」
モットーは、決して手を抜かず、小さな努力を積み重ねていくこと。
控えめに笑う姿は、魔女というよりも、黙々と道を究める求道者のようだ。
取材・文/萩原絹代 撮影/坂本利幸
はぎわらきぬよ◎大学卒業後、週刊誌の記者を経て、フリーのライターになる。’90年に渡米してニューヨークのビジュアルアート大学を卒業。’95年に帰国後は社会問題、教育、育児などをテーマに、週刊誌や月刊誌に寄稿。著書に『死ぬまで一人』がある。