実際問題、身元保証人なしで賃貸物件を契約する方法もある。保証会社と契約を結んでいる物件を選ぶことだ。決められた保証料を支払うことで、身元保証人を立てられなくても賃貸借契約ができる。ただし、保証会社は自分で選べないし、物件が保証会社と契約しているかどうかは大家さんの意向なので、一概に利用できるわけではない。
わたしがおすすめするのは、UR賃貸住宅だ。収入や貯蓄額が一定の基準に達しているかなど条件はあるが、身元保証人なしで借りることができるうえ、礼金や仲介手数料、更新料も不要などのメリットもある。人気エリアの物件は家賃も高く空きも少ないが、郊外の古い物件であれば、手頃な部屋が見つかることも多い。
アメリカでは保証人は必要なし
ちなみに、アメリカでは「人種、性別、障害の有無、結婚の有無」でアパートを貸さないことは法律で禁止されている。もし、そのようなことがあれば、法律違反で訴えることができる。では、大家さんは何を担保にとるかというと、デポジットと呼ばれる通常家賃の2か月分程度の保証金だ。身元保証人は言うまでもなく無用だ。もし、家賃を滞納した場合はどうするかというと、裁判にかける。それで解決。
保証人を必要としないアメリカの考え方は、まともだと思うが、どうだろうか。家族とて個人。従属物ではない。「妻の代わりにわたしが答えます」と平然と言ったどこかの国の首相がいたが、トップがこれではね。
自分の責任は家族や身内ではなく、自分でとるのは、当たり前だと思うのだが、いかがなものだろうか。
時代は変わった。家族単位から個人単位にあらゆる制度を見直すときがきている。家族は個人の集合体。妻も、夫も、子供も個人。家族単位の考え方をわたしたちも変えないと、一周まわって、自分の首を絞めることになりかねない。
<プロフィール>
松原惇子(まつばら・じゅんこ)
1947年、埼玉県生まれ。昭和女子大学卒業後、ニューヨーク市立クイーンズカレッジ大学院にてカウンセリングで修士課程修了。39歳のとき『女が家を買うとき』(文藝春秋)で作家デビュー。3作目の『クロワッサン症候群』はベストセラーとなり流行語に。一貫して「女性ひとりの生き方」をテーマに執筆、講演活動を行っている。NPO法人SSS(スリーエス)ネットワーク代表理事。著書に『「ひとりの老後」はこわくない』(PHP文庫)、『老後ひとりぼっち』(SB新書)など多数。