黒井戸殺しの容疑者が次々と浮上するが、3時間のドラマで殺人が起きるのは1回だけ。しかし、三谷はそこに自信を見せる。
「以前から、日本のサスペンスものは人が死にすぎる気がしていたので、今回のように、1度の殺人事件だけでも、話が面白ければ成立するということを、改めて示したかったんです。どうやって犯人をあぶり出していくのか? 推理の道筋を楽しんでいただければと思います」
ドラマは戦後間もないころの設定で、黒電話などの小道具や登場人物の衣装にその時代の雰囲気が漂っている。
「最初、プロデューサーに“横溝正史の金田一シリーズの未発表のものが発掘されて、映像化されるみたいな感じのものになればいいな”とお伝えしました。物語の舞台を、日本のどの年代に置き換えるかを考えたときに、いちばんしっくりきたのが『犬神家の一族』や『八つ墓村』といった戦後すぐの農村だったので、設定はうまくいったかなと思います。
ミステリーとしてもすごく骨格がしっかりしていて、映像的にもとてもきれいな画が撮れていると思いますし、ほかのテレビドラマと比べても、ゴージャスなものになったと思います」
手ごたえを感じている三谷は、早くも次作に意欲的。
「クリスティー作品には、まだまだやりたいものがあり、あと50作くらいはできる気がしています(笑)。ぜひシリーズ化していきたいです」
渡辺恒也プロデューサーは、
「三谷さんならではのユーモラスな人物像と事件推理へのアプローチが光る実写化によって、原作を読んでいる人も読んでいない人にも新鮮に楽しんでいただける作品になっています」
三谷がリクエストした
キーパーソンとは……
豪華出演陣は見どころだが、三谷が“この人を”と唯一、希望したのは原作のキャロラインにあたる柴カナ役を演じる斉藤由貴。
「(キャロラインは)詮索好きで、ちょっとおっちょこちょい、どこか悲しげなところも、母性もある。彼女が年老いたら、(アガサ・クリスティー作品の名探偵)ミス・マープルになるんじゃないかと思うこのキャラクターを誰が演じるかで作品のイメージが変わってくると思います。僕のなかでは、斉藤さんのイメージが強かったんです」
<作品情報>
『黒井戸殺し』フジテレビ系
4月14日(土)夜7時57分〜