4月上旬、都内の高級住宅街にある高島家を訪ねた。玄関前には1台の自転車が置かれていて中からはカチャカチャという音が聞こえてくる。寿美が食器を洗っているのだろうか……。
近隣の住民に聞いてみると、
「最近、ふたりの姿はまったく見ていない」
「自宅はいつも、ひっそりと静まり返っている」
など彼らがまるで自宅に住んでいないかのような証言ばかりが集まった。だとするとあの自転車はいったい……。数時間後に戻ってみると、玄関前の自転車は消えていた。
4月中旬に再度訪問すると、今度は自転車ではなく1台の自動車が門の前に止まった。中から男性1人と女性2人が現れ、高島宅に入っていく。医師と看護師のようだ。車のフロントウインドーには、「訪問巡回中」と記されたプレートが置かれていた。診察が終わったのか、30分ほどで3人が出てきた。
やはり高島は介護施設に入り、寿美も病院に通えないほど衰弱して、自宅での闘病生活を余儀なくされているということなのだろうか─。