「近年では、録画機能が充実したハードディスクプレーヤーや民放アプリなどで見逃したドラマを簡単に視聴できるため、リアルタイムで視聴する必要性がなくなったのだと思います。
テレビだけではなく、若い層にはAbemaTVなどのネット配信サイトも人気。ほかのコンテンツがあふれているからこそ、ドラマを見ない世代も多いんです」
とはいえ、良質なドラマがたくさんあるのも事実。ドラマ界の現在について取材を進めると、制作側のさまざまな努力が見えてきた。まずは、かつての人気番組の脚本家に、ドラマ脚本の今昔話を聞くと……。
暴力描写が受け入れられない風潮
「脚本も時代に沿って変わっていくのですが、アクション系は減りましたね。昔は、日常生活でも殴り合いのケンカが起こっていた時代だったので、受け入れられていたのだと思います。今の時代はそうはいかないんですよね(笑)」
こう語るのは、一般社団法人シナリオ作家協会の会長で、『あぶない刑事』(日本テレビ系)や『西部警察』(テレビ朝日系)をはじめ、数々のドラマ脚本を手がけた柏原寛司さん。
現代では脚本にも変化があるというが、’16年に公開された映画『さらば あぶない刑事』の脚本には、こんな“物言い”がついたという。
「映画を見た若者から、“なんであの刑事はすぐ殴ったり銃を撃ったりするの?”という声が上がったそうです。
私たちからしてみれば“悪いヤツが銃を持ってたら、こっちだって撃つだろ”と思うのですが“暴力はいけない”という現代の風潮が、視聴者の受け取り方にも影響していると思います」(柏原さん、以下同)
視聴者と同様、プロデューサーなどの作り手にも同じことを考えている人が多いそう。
「“暴力はダメ!”という教育を受けて育ってきたわけですから、自ずとドラマ内での暴力描写も少なくなってきますよね。また、そういった作品が少なくなってきたので、撮り方もわからないドラマ制作者も多いはずです」
こういった風潮を受けて、昨今は同じジャンルのドラマでも、昔とは違う作風のシナリオになっているとか。
「例えば刑事モノの作品でいったらアクションや暴力描写が少なくなっていくと同時に、『相棒』『トリック』(ともにテレビ朝日系)に代表されるような“頭を使うミステリー”の作品が多くなってきましたし、人気もありますね」
表現の幅が以前よりも狭まっている印象を受けるが、暴力描写以外にも要因がある。