「撮影前に、監督ときょうだいで何回も集まりました」
母親の失踪後、過酷な状況の中で生きるきょうだいの姿を描いた映画『誰も知らない』は、是枝監督の代表作だ。’04年、弟妹の面倒を見る長男役の柳楽優弥がカンヌ国際映画祭の男優賞を受賞。北浦愛は当時10歳で、柳楽の妹役で出演した。
「遊びの延長線上にカメラがある感じ」
撮影前に集まって、いったい何をしていたのか?
「劇中で着る洋服を買うために、みんなで大型スーパーに行きました。いろいろ試着してみようって。映画で登場する公園にも遊びに行きました」
きょうだい役の子どもたちは演技の経験がほとんどなく、わりとシャイな性格だった。
「でも撮影前の集まりのおかげで、遊びの延長上にカメラがあるという感じでした。撮影が始まって、監督に“どんなシーンを撮るの?”と聞くと、“こうだからみんなはお兄ちゃんのほうを静かに見てて”と教えてくれたりして。みんなは監督の言われたとおりにやってました(笑)」
公園などで遊ぶシーンなどは、本番直前まで是枝も参加していたという。
「ふと気づくと、是枝さんはモニターの前に座っていて。知らず知らずのうちに本番がスタートしていたから、本当に素とお芝居との境界線がなかったと思います」
告知なしで怒られて……
もっとも印象的だったのは、長男役の柳楽と次男役の木村飛影のケンカのシーン。
「柳楽くんが飛影くんを怒るんですが、飛影くんは怒られることを事前に知らされてなくて。監督は柳楽くんにだけ“いきなり怒って”と伝えていたから、飛影くんは素のリアクションだったと思います。
いきなりおもちゃを蹴られて、柳楽くんに“モノに当たんなよ!”とか言ってるんですけど、全部アドリブ。でもそのあと、2人はギクシャクしていました。飛影くんは本当に怒られたと思ってたから(笑)」
そんな芝居を超えているシーンはほかにもあったという。
「母親役のYОUさんも台本をもらってなかったみたいなんです。だから家族みんなで食卓を囲むシーンは全員がアドリブって感じでした」