ファンの年齢層は彼女と同世代か、ちょっと上のひとたちで、まあ、いわゆる40代中盤〜50代くらいのオジサン、オバサンたち。『おニャン子クラブ』時代からのファンなのだろうが、オジサンの姿が特に目立つ。
冒頭のMCで静香が《先日、テレビ番組で“『おニャン子』時代はやる気ゼロだった”と、発言したんですけど、そこだけ切り取られて話題になっちゃったから困った》と切り出すと、会場からはどっと笑い声があがった。ときおり「しーちゃん」「しずかさーん」と客席から声がかかり、会場はなんだかハートフルな感じだ。
セットリストは、過去のヒット曲と新曲を中心に構成されており、静香とピアニストふたりだけというエコなステージ。
歌の合間には、特にリクエストコーナーでもないのに、客席から飛び出すリクエストに応えて、アカペラで歌うなど、ファンサービスは手慣れたものだ。ほかにも、芸能界入りのきっかけとなったオーディションで歌った『セーラー服と機関銃』を披露。
そんなステージのなかで私が驚いたのは、Koki,が作曲した『鋼の森』という曲を歌っているときだった。ちょっと変わった振り付けだなと思ったのだが、その手振りは、実は手話だったのである。
なぜ手話を?
彼女の話では、ライブに来るファンのなかにいつも、前方の席から手話で声援を送ってくれる女性たちがいるという。最初はわからなかったが、手話だと気付いたときに、自分もそれに応えようと、習い始めたそうだ。
そして、こんなエピソードまで。
《いま長女が、学校で『手話』を習っていて、あるとき先生に“あなたのお母さんは手話の世界では有名なのよ”と言われたんですね。どういうことかって言うと、“これ”は手話で“工藤さん”を表しているって言うの》
「これ」というのは、静香の通算7枚目のシングル『嵐の素顔』の、あの振り付けのことだ。
今回は長女の話だけで、木村拓哉やKoki,の話は出ることがなかった。やはり、意識的にそうしているのか、それとも、単にMCで話すほどのエピソードがなかっただけなのか。次回に期待したいところだ。
ただ、今回の熱のこもったステージからは、“ゼロ”どころか、やる気は十分に伝わっていたように思うーー。
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。