土壌の悪いところが避難場所になっているケースも
避難場所に指定された場所が、本当に安全地帯にあるかどうかも疑問だと、前出の高橋教授が再び口火を切る。
「公民館、体育館、学校は避難場所になっています。宅地開発の際には、土壌の悪いところはだいたい広く空いていて、そこが学校か公民館になりがちです。
昭和20年代(’45年~’54年)までに建てられた伝統校は、よい土地に立っているんですよ。第二次ベビーブームのためにできた学校は、大概よい土地には立っていません。そういう場所が避難場所になっている。
基本的に地震で危ないところは、洪水でも危ないです」
一部の具体例を前出・高橋教授が指摘する。
岐阜県岐阜市学園町。もともと長良川が流れていた土地だが、今は保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校、養護学校が並んでいる。ハザードマップの指定は“避難場所”。
京都の鴨川や桂川の河原に立つ学校も“避難場所”になっているが、洪水がきたらひとのみにされる。
愛知県で避難場所に指定されている高校も、そこは昔、庄内川が流れていた場所だった……。全国至る所に安全とはいえない避難場所はある。
安全か見極めるために必要なのは“土地の履歴を知ること”
どこが危険でどこが安全か見極めるために、前出の高橋教授が提唱するのは“土地の履歴を知ること”──。
「岡山から広島、山口にかけては、花崗岩(かこうがん)でできている山があります。墓石に使う石ですが、すぐにボロボロになる石です。そのような山から焼きものづくりのために木を切ってしまうと、禿山(はげやま)になり、雨が降れば当然崩れます。実際、広島では何度も土石流が起き、土石流扇状地という土地ができています。周囲より少し高台になっているので、ハザードマップには記されず、そこに家を建てる人がいます。
土地の履歴を知っていれば住まない場所に住み始めたのが’70年くらいからです」
土地の履歴を知ったうえで、自治体が作ったからといってハザードマップをうのみにせずに批判的な目でみることが、個人としてできる対策になる。