顧問は「なんでも知っていないといけない存在」
3月2日には、部則で禁じられていた部内恋愛をしていたかどうかを中心に顧問に呼び出され、指導を受けている。部内恋愛について顧問に伝えたのはAくんだ。なぜ報告したのか?
「(顧問には)何かあったら報告しないといけない。部活のことは、なんでも知っていないといけない存在だから」(Aくん)
顧問は2年生部員を同席させて指導を行っている。そのとき、大輝くんに「言葉では言い表せないことを吹聴している(だろう?)」と、あいまいな表現で聞いてきた。大輝くんは2月の指導のこともあり、何のことかわからないにもかかわらず、「わかってます」と言ってしまった。
翌3月3日は、吹雪の影響で部活の開始時間が遅れた。本来は9時スタートだが、10時からに変更されていた。大輝くんは9時すぎに、1度は学校に来ていた。校内での目撃証言があるが、部活には顔を出していない。
その前夜、大輝くんはAくんの自宅を訪ねている。しかし、帰宅していないと思っていた家人が対応したため、会えずにいた。3日の部活前のミーティングで、Aくんは、昨晩に大輝くんが訪れたことを顧問に報告したところ、こう述べたという。
「家に来ても居留守を使え。連絡が来ても応じるな。関わったら危険な目に遭う。いっさい関わるな」
大輝くんをさらに孤立させるかのような発言だ。結局、学校を出た大輝くんは地下鉄の駅に向かい、遺書のようなメールをAくんに送ったあと、命を絶った。
翌4日、部活のミーティングで顧問は「あいつは最終的に、最後まで部活を乱していた」「最後までダメだった」と発言していたのをAくんは覚えている。事実なら、大輝くんの尊厳を傷つける発言だ。
吹奏楽部は、授業以外は練習で埋まり、部員たちはほぼ1日、生活をともにすることになる。顧問は同校に長年勤務していたが、校内での評判を気にして朝練前、部員に清掃をさせていた。部では多くの部則が作られた。そんななかで部員と顧問の力関係ができ、顧問の言動が善悪の基準となっていたのではないか?