大輝くんの自殺後、学校は吹奏楽部員と1~2年生の生徒を対象にアンケートをとったが、母親である美和さんに開示していなかった。そのため、北海道に開示するよう求める申し立てをしていた。
札幌地裁は'17年7月19日、個人を特定できる情報が処理され伏せられていれば、「内容を知られることを望まない趣旨で回答したとは認めがたい」「教育行政上の支障が生じるとは認めがたい」として、部員25人へのアンケートの提出を命じる決定をした。こうした申し立てで開示が認められたのは異例だという。
さらに美和さんは、1~2年生の生徒へのアンケート635通の原本も開示するよう求めていた。提訴前の'14年5月、遺族側は個人情報開示請求を使い、アンケートの一部を転記したデータを開示されているが、15人分のみだった。
アンケート原本破棄のアキれた言い訳
ただ、この種の開示では、原本を確認することが大事だ。そこで手書きの原本の開示請求をしたが、同年10月、「不存在」との通知が出された。「廃棄処分ずみ」として開示されなかった。
遡(さかのぼ)ること1か月前、'14年9月に行われた弁護士と学校側とのやりとりで、校長は「現物は見ていない」としながらも、教頭は「アンケートはすべてある」と回答していた。
このアンケートに関連して、裁判の証人尋問で、教頭が証言している。それによると、教頭自ら部員向けにアンケートをとる際に説明を行っていた。そして、回答を転記するように、当時の生徒指導部長に指示したという。
アンケートを書いた元部員のAくんは、どんな説明を受けていたのか。
「教頭先生が“今からアンケートを配る”と言って、白紙の紙を渡されたんです。“アンケートは親御さんに渡す。だから、知っていること、覚えていることがあったら、なんでも書いてほしい”と言ってました」
教頭は「(親御さんに)見せるとは言っていない」と証言したが、「渡す」とは言っていたようだ。渡すというのは、母親に内容が伝わることを前提にした言葉だろう。
アンケートの原本を破棄したのは「転記していたから」と述べる一方で、'14年9月に行われた弁護士とのやりとりでは「(原本が)ある」と回答した教頭。事実であれば、発言は虚偽だったことになる。しかもアンケートは公文書として5年間の保存義務がある。これも教頭は「まったく認識していなかった」と、尋問で証言している。