柳生十兵衛を演じるのは、’08年のドラマ『柳生一族の陰謀』以来10年ぶり。十兵衛という人物像につては、「ひと言でいってしまえばギャップに満ちた人」と語る。
「徳川将軍家兵法指南役を担う父親の宗矩も認めざるを得ないほどの腕の剣豪であるのに、己の剣にも父親の職を継いで地位を得るということにもまったく拘泥(こうでい)していない奔放さ。女性にはモテる一方で、女性に対しての接し方はとても不器用。そうしたいろいろな部分でのギャップが彼の大きな魅力になっていると思うんです。
おそらく世を転覆せしめんとする一団に狙われて相対することになっていくというのは、十兵衛にとってはある意味、面倒なことだったりするんですけど、戦えばめっぽう強い。そんな不思議で人間くさい人物だと思ってます」
舞台は面白いことに出会えるところ
今作は豪華キャストにも注目。魔界の力で甦る天草四郎を演じるのは、近年多くの舞台で評価を得ている溝端淳平さん。松平健さん、浅野ゆう子さんなどのベテラン陣。舞台で活躍する人気若手俳優も多数登場する。座長を務める上川さんは、リーダーシップを発揮するタイプではないそうで。
「“俺について来い”なんて、口が裂けても言えない性質(たち)なので。そこに共演者やスタッフの方がいてくださるからこそ、自分がやりたい芝居ができて、しかもお客様にも喜んでいただくものを作り上げられるわけですから。みんなに感謝しながら過ごしてます」
後輩からアドバイスを求められたら?
「知ったかぶりもしたくないですし、“困ったね~”って一緒に悩みたいと思います」誠実で謙虚な人柄がにじみ出る。舞台出身の上川さんにとって舞台とは?
「僕にとっての舞台の原点的なありようは“面白いことができるところ”なんです。今回も『魔界転生』という面白そうな現場に立ち会う機会を得られた。作品を新たに投げかけていただくことによって、これまでに見たことがない面白いことと出会える。舞台と出会った当初に感じた芯みたいなものが、いまだに色あせず熱も失わないままにあるからこそ、僕は明日も芝居ができるんだと思うんです」