挑戦的な表現方法で勝負する
’05年から連載が始まった『駅から5分』は、架空の街・花染町ですれ違う人々の日常を描いたオムニバス作品。
「『天然コケッコー』はストーリーがあって、その中でキャラをどう動かしていくかでしたが、『駅から5分』では純粋にキャラありき。その性格に合った動きがストーリーとなり、最終的にテーマに触れていく作品です」
ひとつの街を舞台に複数のキャラクターが同時進行で描かれていく画期的な手法には漫画界からも喝采が上がった。
「『この漫画がすごい! 2009』のオンナ編の第2位にも選ばれ、若い読者ファンを獲得しました。ベストテンに入った他の作品は’90年代以降にデビューした先生方ばかり。
そこに、’72年デビューの先生が割って入ったのですから、快挙としか言えません」
そう語るのは、この作品からふさこの担当編集者となった当時『コーラス』編集部の北方早穂子さん。
しかし、画期的な手法だけに、連載中は苦労の連続だったという。
「最初、『駅から5分』の構想を聞いたとき、緻密に物語を作り上げてから連載を始められたのかと思ったら、かなり行き当たりばったり。そのため『駅から5分 WORLD』といった人物相関図や『花染駅から5分 MAP』を作りながら整理をしました。伏線回収には四苦八苦しましたね」(前出・北方さん)
さらに連載を始めてわずか3話で病魔が襲う。
「右目の下半分が見えなくなり、頭の中に良性の腫瘍(しゅよう)ができて摘出手術を受けました。ブランクがあくと描けなくなるのではないかという恐怖がありましたね」
と、ふさこは当時の心境を語る。