これで一件落着のように思えたのだが、

「義妹は自分の雇った弁護士ともトラブルを起こし、弁護士費用も未払いのまま。おまけに銀行や菩提寺の住職ともトラブルになって、そのたびにこちらに連絡をしてくるんです。無視をしたくても無視できない状態に追い込まれ尻ぬぐいがいまだに続いています」

 金銭問題がいちばんの原因であることは間違いないが、やはり、家族という関係の近さもトラブルを起こす原因のひとつになっているよう。きょうだいリスクについて語ってくれた社会保険労務士の浜田裕也さんは「自分に目が向けられない寂しさもあるのでは」と、こんな体験談を。

「私は話し合いなんかに出ない」

「50代の姉妹がいらっしゃる80代のご夫婦からの相談だったのですが、次女が引きこもりで、今は彼女の面倒を自分たちが見ているが、自分たちの死後のことが心配だと。そこで、これからのマネープランを相談したい、というご連絡をいただきました。そこで長女にも同席してもらい、家族で話し合いたいということだったのですが……」

 浜田さんの事務所に、その長女から電話がかかってきたという。

ものすごい剣幕で“私は話し合いなんかに出ない”と。“今、親が妹の面倒を見ているけど、親が死んだあと、私は絶対に面倒を見ません”と言うんです。どうせ財産は妹にいって、私のところにはお金もこないだろう。それで面倒見ろとは虫がよすぎるんじゃないかって。

 確かに、親御さんはそこまでたくさんの財産がなく、妹さんひとりが生きていくには、ほぼ全額を渡さないといけない状態だったんです」

 姉は未婚で、家を出て別居状態。

「もともと姉妹は仲がよくなかったらしいのですが、お姉さんからしてみれば、親は妹の面倒ばかり見て、自分はひとりで大変な思いをして働いていて。そのうえ家にいるだけの妹が財産を持っていくなんて、という気持ちなのでしょう。感情的になってしまう気持ちもわかるので、何も言うことができなかったです」

 日常生活で積もった“思い”が、家族の絆を壊していくということか。逆に絆がない人たちが相続人になっても、一筋縄ではいかなかったという。前出の高橋さんは、こう振り返る。

「家族など血縁者の相続人がいない男性が、まったくの他人3人に相続すると遺言書を残したことがありました。相続する3人もお互い知らない間ではないのですが、仲がいいというわけではない。みんなで集まってくれれば話は早いのですが協力態勢がゼロ(笑)。僕は伝書バト状態でした。

 ただ、遺言書がちゃんとしていたので、相続の内容でもめることなく進めることができました」