「出会いがない」と聞くと血が騒ぐ
10年ほど前に婚活という言葉がブームになると、荒木さんは婚活コーディネーターという名称を考えて、自ら名乗り始めた。単に司会をするだけでなく、自己紹介タイムはこれくらいにしよう、こんなゲームをしたら盛り上がるのでは、など自分のアイデアを出して、プランニングから携わるようになった。
現在、荒木さんがタッグを組むのは自治体が7割、企業は3割ほど。依頼が多く断ることもあるそうだ。婚活イベントに自治体の担当者が視察に来ることも多く、ノウハウを知りたいと頼まれると無償で教えている。
前出のプランナーの岡村さんに聞くと、地方創生や少子化対策の一環で、婚活事業をやる自治体が増えているのだという。
「ただ、失敗している自治体もあります。嫁に来てほしいからと男性をその地域限定にすると女性が集まりにくい。テーマ婚のように共通の趣味を持った人を集めるほうが成功しやすい。司会も重要で、直美さんはやっぱり特別です。メチャメチャお節介で、フリータイムでも常に目を光らせていて、女性同士で群れだすとすぐに声をかけたりして、かなりきめ細かくお世話していますから」
仲人をするご近所さんや会社の上司がほぼいなくなった今、時代が荒木さんを求めているのだろう。それを象徴するようなエピソードがある。
荒木さんの夫・拡光さんが仕事で会食していたときのこと。子どもの話になり、会食相手が「息子が結婚しない。親も頑張らないと」と切り出した。そして財布から大事そうに取り出したのは、なんと自分の妻が地元紙に書いた婚活のコラムで、お互いにビックリ仰天した。出来すぎのようだが、本当の話だ。
非婚、晩婚化が進み、親同士の代理婚活まである昨今。荒木さんは親向けのセミナーも企画している。親と子どもの結婚観のズレが大きくなっていると感じるからだ。昭和的結婚観を押しつけると子どもが反発して逆効果になるといさめたうえで、婚活イベントの情報や婚活のやり方を伝えている。
「誤解してほしくないのは、結婚したくない人を無理やり結婚させようとは思ってないんです。今はひとりでも生活できるし、女性のキャリア志向もあって、ライフスタイルが多様化していますから。ただ、“結婚したいのに出会いがない”と聞くと、婚活コーディネーターの血が騒ぐんですよ(笑)。みんな、もっと気軽に婚活に来てほしいです」
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冒頭で紹介した浴衣パーティーの終盤。あちこちで男女がツーショットになって話し込む姿が見えると、荒木さんは動き回るのをやめ満足そうな表情を浮かべた。
「この景色を見ていると、胸が熱くなります。日本の未来はまだ大丈夫かもしれないって。男女が引き寄せ合って、未来を思い描くのは当たり前のことなのに、今の日本に少しずつ欠けてきているから……。こういう景色をずっと見続けていきたいし、幸せのお手伝いって、自分も幸せな気持ちになりますよね」
そして、屈託なくのろけた。
「私もね、早く主人に会いたくなるんです。フフフ。あ、これは書かなくていいですよ!」
(取材・文/萩原絹代 撮影/渡邉智裕)