大食堂復活を望む1万人の署名
’16年3月20日、小友は記者会見を開き、「花巻家守舎がマルカン百貨店から建物全体を借り受け、6階の大食堂の営業を再開できるかどうか、5月末を期限に検討を行う」と発表した。
そのニュースは、大きな話題となった。そして花巻家守舎のパソコンには、「応援している」「何か手伝えることはないか」というメールが全国から押し寄せたのだ。
4月はじめの段階で、テナント候補として申し込みや問い合わせも殺到した。問題は、予算である。耐震工事はじめ見積もりを取ったらざっと6億円かかるとわかった。
もうひとつの問題が、大食堂の運営。飲食業経験のない花巻家守舎としては、飲食業に精通した企業に大食堂の運営を委託するしかない。
課題は多かったが、小友の大食堂復活プロジェクトを後押ししたのは、花巻北高校の生徒が集めた署名だった。高校生が自主的に集めた署名は合計9615人分。5月29日、小友のもとにそれを届け、「あの食堂がなくなると困る」という思いを伝えた。
「あれがすごく参考になりました。彼らの活動によって、ほんの2か月の間に1万人近い人の署名が集まっている。ほかにも全国から応援メールが驚くほど届く。これだけ応援してくれる人たちがいるなら、その人たちから少しずつ力を借りられるかもしれない」
もともと営業引き継ぎ検討の原動力は、大食堂のブランド力だった。ならばクラウドファンディング(CF)や寄付という手法もある。CFとは、インターネット経由で不特定多数の人々から資金調達を行い、事業などを達成する仕組みのことだ。
「正直な話、“残したいのならどれくらいお金を出せますか?”と問うたわけなんです。それで1000万円も集まらなかったら、この取り組みはやめようと思った。結局、ノスタルジーばかりで自分の懐を痛めてまでじゃないという人だけなら、大食堂は残す必要はない、と考えたんです」
人任せの野次馬ばかりなら町づくりにはつながらない。小友はそう確信していた。