昨年の『奪い愛、冬』で、“不倫される妻”を演じた水野美紀。そして今年、『あなたには帰る家がある』で“不倫する妻”を演じたのは“薄幸系”女優の木村多江だ。
「水野さんのぎょうぎょうしい狂気と木村さんの静かに入り込んでくる狂気は、それぞれ違った怪演でした。10月にはNHK『チコちゃんに叱られる!』で“メスの蚊”になりきり迫真のひとり芝居を披露した木村さん。また新しい扉を開いていました(笑)」(テレビ局ディレクター)
彼女たちは、もとは正統派、また“よき妻”としての演技が評価されていた─。
「今は、不倫ものが増えていますよね。不倫ドラマに付きものなのが、ヒロインを追いつめる“いやな女”枠です。かつて正統派として活躍した女優さんが30代後半から40代になり、妻、母親役を演じるようになったことで枠に入ってきています。“不倫する・される奥さん”を悪役として演じるのは自由に暴れられるというか、振り切った演技ができるので本人も楽しくやれるのかも」(成馬氏)
これは、小沢真珠の演技が話題になった『牡丹と薔薇』('04年フジ系)のような、“昼ドラのノリ”に通じるのだとも。不倫ドラマは“昼メロ”化がトレンドなのだろう。
そして、女優の転換期を迎えるのが30代なのかもしれない。20代前半までは正統派を演じられるものの、以後は仕事や恋に悩む女性を演じたり、個性派や演技派に移行する人もいる。また脇役、主役として進む道が分かれる時期でもある。
当然、男性俳優にも言えることだが、人生における変化が多い女性だけに、演じる側にも相応の変化が求められる。さらに下の世代からの押し上げもあるため、生き残る手段として“変身”は不可欠なのかも。