35歳で離婚し、リスタート

 多忙な中、35歳のときに大きな決断をする。離婚して、婚家を飛び出したのだ。

「夫とはだんだんうまくいかなくなって、“年を重ねて動けなくなったとき、この人には面倒みてもらえっこない!”って思っちゃったのね。ひとりになっても食べていけるぐらいになろうと準備をして、それで別れました。実は離婚したときはもう美容はやらないつもりだったんです。美術学校にも通って、ほかの道を探していたんだけど……」

 そのころ小学生だった娘のちがやさんは、当時の様子をこう振り返る。

「正直言って、生活は最初大変だったと思います。父と別れて住んだマンションに同級生が来たとき、“おまえんち、テレビないなんて、ヤバくねぇ?”って言われたこともあって。そしたら、母は“しょうがないわよ。おばさんは家を出てきちゃったんだから。そのうち買うわよ”と言ってましたね(笑)。私は小さいころから、サチコさんのことを母親というよりひとりの女性として見ていたので、離婚の件やいろいろあってもしょうがない、と受け止めてました。父には“おまえ、これからあの人とふたりきりで大変だぞ”と言われましたけどね(笑)

 別の仕事を模索しようとしていたサチコさんだが、彼女の実力を知る人たちが放っておかなかった。

「じゃあ、手伝うだけねって始めたら、また歯車が動いていってしまった。私ひとりではできない仕事だから、新しく『アルファタッチ株式会社』を立ち上げてスタッフを雇うようになって。それからまた大忙しの日々が始まったんです」