ムムッ?
三谷さんとはやはりオリジナルのミュージカルだった『オケピ!』で初タッグを組んで以来、ニューヨークで初演の幕を開けた『Talk Like Singing』、『ショーガール』などで厚い信頼関係を築いている川平さん。それでも今回はとにかく、驚くことが多いのだそう。
「最初に台本を読んだときは“ムムッ? これ、いったいどんなエンターテイメントになるんだろう?”って思ったんですよ。
“三谷さん、いままでにない引き出しを開けてきたんじゃないかな”と。僕らの知っている三谷さんといえば、危機的状況に陥った人々がどんどん追い込まれていくシチュエーション・コメディーでしょ?
でも今回は、そういうドストライク・ゾーンじゃない。でもこれが、稽古場でどんどん面白くなっています」
川平さんは、約10もの人物を演じることになる。
「10役というのは時代も老若男女も問わず、変身、ワープしますよ。
“僕がこれやるの?(笑)”という役までね。それは全員同じ。あえて予想を裏切るくすぐり方をしてきます。“(中井)貴一さん、これやっていいのかなぁ?”とか。
もう僕ら7人、いったん始まったら楽屋へは戻れません。着替えているか、舞台上にいるか。見ている人は驚くでしょうけど、出ているほうも“え? 今ここにいる僕が、このタイミングであそこから出る!? 無理でしょ!!”みたいな(笑)。
僕がふたりいないと無理だから、出てくるのは博多華丸だったりして(笑)。それくらいマジカルな、デヴィッド・カッパーフィールド的なことをやるようですよ」
川平さんは今回「歌以上に、芝居を求められている」という。
「この作品でいちばんの目玉は、貴一さんが初ミュージカルで新たな魅力爆発、という点だと思うんです。その貴一さんと僕、ふたりっきりでいいシーンがあるんですよ。
日本史の中のある時代なんですけど、貴一さんは翻弄(ほんろう)されるほうなんです。僕がたぶん、劇場内でいちばん楽しんでいるんじゃないかな、お客さんを差し置いて(笑)」